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コノシロの砂食い──葛西 11/29
 「コノシロ」という魚を知っていますか? 「コハダ」といえばわかる方が多いでしょう。江戸前寿司の「光り物」としてかかせない寿司種の「小鰭」(コハダ)です。関東では体長10~15センチ前後のコノシロをコハダと呼びます。

 このサイズのコノシロがもっともおいしいとされ、すし種として珍重されています。でも、コハダのお寿司は食べたことがあっても、すがたを見たことのある方は少ないでしょう。

 葛西臨海水族園のコノシロは「東京の海」のコーナー「東京湾の漁業」の水槽にいます。銀白色にかがやく体色、扁平で華奢な体つきから、繊細な印象を受ける魚です。実際、うろこがはげやすく、「擦れ」にも弱いので、とりあつかいには神経を使います。繊細なのは外側だけではありません。身もやわらかく、鮮度も落ちやすいことから、手早く酢でしめる料理が適しているようです。

 このコノシロたちのおもしろい行動を見たのは夕方のことでした。つぎつぎに水槽の底に口をつけては、なにやらモグモグしているのです。よく見ると、水槽の底の砂を口でパクッとくわえ、モグモグとした後、なんとも器用にペッと吐き出しています。下にふくらんだアゴに砂がたまっているのが、透けてよくみえます。砂のかたまりを吐き出すときは、まるでアゴがはずれたかのように口が前方に伸びます。かわるがわる銀色の体を光らせながら水槽の底に降りては、モグモグペッ、モグモグペッと、しばらくこの行動は続きました。

 いったい何をしているのでしょう? 遊んでいるわけではありません。じつは砂の中の細かい餌を食べているのです。水槽の底には、いっしょに展示しているマイワシの細かい糞が堆積しているので、それを食べているのかもしれません。

 コノシロと近縁の魚に「ドロクイ」という名の魚がおり、名前のとおり泥を食べます。海底の泥を口にふくみ、泥の中から餌をこしとって食べているのです。図鑑によればコノシロはプランクトンを食べるとされていますが、ドロクイと同様、泥食いあるいは砂食いの習性もあるのでしょう。なんともおもしろい餌の食べ方です。

 コノシロは、東京湾で年間何百トンも水揚げのある、東京湾を代表する魚です。「東京湾の漁業」の水槽ではマイワシ、マアジ、イシガレイ、マゴチなど、コノシロの他にも江戸前のおいしい魚が展示されています。「おいしそう!」だけではなく、なじみのある魚の生きた姿をじっくりみて見てください。コノシロのモグモグペッを見るには、夕方がおすすめです。

〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕



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