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大変身する魚、クギベラ
 └─葛西  2015/04/03

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「グレートバリアリーフ」水槽のクギベラを紹介しましょう。

 クギベラは中部~西部太平洋、インド洋、日本国内では駿河湾以南に分布し、浅い海のサンゴ礁域や岩礁域で見られます。特徴はなんと言っても鳥のくちばしのように尖った口です。その口を使って、サンゴの間などに隠れている甲殻類などを食べることができます。サンゴ礁域でくらすためにみごとに適応した魚です。


クギベラ(イニシャルフェイズ)

 いま水槽にいるクギベラは体色が白地で後半が黒く、吻の上側が鮮やかなオレンジ色をした「イニシャルフェイズ」と呼ばれる段階の個体です(イニシャルフェイズは「初期の段階」の意)。ちょっと話が複雑になりますが、ベラの興味深い体の変化についてお話します。

 かつて、ベラのなかまはメスからオスへ性転換する魚といわれていました。そして、性転換すると体の色や模様が変化し、オスとメスを区別できるとされていました。しかし、最近の研究で、中には生まれつきオスの個体もいて、単純に割り切ることができないことがわかりました。


クギベラ(ターミナルフェイズ)

 そこで、成長や性転換にともなう体の色や模様の変化に応じて、初期段階の個体はイニシャルフェイズ、変化をした最終的な段階の個体はターミナルフェイズと呼んでいます。水族園では性転換すると体の色や模様が変化すると考えられていたベラ科とブダイ科の魚にこのことばを使っています。

 水槽の中のクギベラがメスなのか? はたまた体色が変化していないオスなのか? 飼育係の私たちにもわかりません。これからイニシャルフェイズの個体を水槽へさらに足していく予定です。そのうちのどれかが、鮮やかな緑色のターミナルフェイズへと大変身するようすを観察することができるかもしれません。

〔葛西臨海水族園教育普及係 雨宮健太郎〕

(2015年04月03日)


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