上野動物園両生爬虫類館「ビバリウム」(以下、ビバリウム)の展示槽は、ほとんどがアクリルガラスで覆われています。
アクリルガラスは透明性が高く、複雑な形に加工することができ、変形、変色、劣化などを起こしにくいという特性がある優れた材質のガラスです。そのため航空機の風防や水族館の大型水槽などさまざまな場面で使用されていますが、表面の硬度が低いので傷つきやすいという欠点があります。
開館15年を迎えるビバリウムのアクリルガラスは、動物の体や爪・歯などでこすられて傷がつき、展示槽の中が見にくくなってきたため、順番に研磨作業をおこなっています。
今回、最も傷がひどかったオーストラリアハイギョとスッポンモドキ、アジアアロワナ、ホウシャガメ、ドクトカゲ、フトアゴヒゲトカゲの水槽5箇所の研磨を実施しました。
オーストラリアハイギョとアジアアロワナの水槽では、飼育の都合上、動物を水槽に入れたまま水位を落としてガラスを磨かなければならなかったのですが、これは動物も研磨の業者さんも飼育係も、まったく初めての経験でした。飼育係は、作業中ひと時も動物から目を離すことができず、業者さんは研磨と動物の両方に注意を払い、動物は水槽の中で右往左往……と、みんなが「ハラハラドキドキ」の連続でした。
三者三様の緊張感に包まれたアクリルガラスの研磨でしたが、その甲斐あって、磨き上がったアクリルガラスは開館当時のように透明さが復活しとても見やすくなりました。
綺麗になったガラス越しに、動物の目、口、鼻、手や足など体の細かい部分をいろいろな角度から観察してみてください。
写真上:「アジアアロワナ」水槽の研磨作業前
写真中上:作業後
写真中下:「ホウシャガメ」水槽の研磨前
写真下:作業後
〔上野動物園両生は虫類館飼育展示係 伊東二三夫〕
(2014年03月07日)
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