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ジェリーフィッシュライダーの不思議な生活
 └─葛西  2014/02/28

 2014年2月21日から、葛西臨海水族園東京の海エリアの特設水槽でウチワエビの幼生の展示を始めました。水族園ではこの幼生の飼育と展示は初めてです。

「クラゲに乗って生活するジェリーフィッシュライダー」(2014年02月20日)

 ウチワエビはイセエビのなかまです。イセエビ類はイセエビ科とセミエビ科に分類され、ウチワエビはセミエビ科に属します。成体のウチワエビは、山形県と房総半島以南、東シナ海からオーストラリア東部の西太平洋沿岸に分布し、水深約300メートルまでの砂や泥のある海底に生息しています。量は多くないですが、食用として流通しています。

 イセエビ類の幼生はフィロゾーマと呼ばれ、その姿や生活のようすは成体とはまったく違います。透明で平らな体に細長い脚がついた姿で外洋を漂いながら成長します。その期間は種によって違いますが、数か月から1年以上になることがあります。

 フィロゾーマの中にはクラゲ類に乗る姿が目撃され、「ジェリーフィッシュライダー」と呼ばれる珍しい種がいます。「ジェリーフィッシュライダー」は乗っているクラゲ類を食べて成長します。目撃されているのはセミエビ科だけで、イセエビ科では例がありません。ウチワエビの幼生は、何種類ものクラゲに乗る姿が目撃されています。幼生期間は2〜3か月で、6〜7回脱皮したあとに透明なエビの姿に変態し、海底で生活し始めます。

 展示している幼生には、餌として主にミズクラゲを与えています。クラゲ類には触手に毒がある種もいますが、幼生は毒にやられないのでしょうか。試しに毒の強いアカクラゲを与えると、幼生は触手を掴んで食べてしまいました。もし人間がアカクラゲの触手にさわるとジンジンと痛みますが、幼生は大丈夫なようです。

 展示を開始し、来園者のみなさんのようすを見に行くと、「エイリアンみたい」とか「クラゲを食べるなんて面白い」といった声がきこえ、熱心にカメラを構える方もいました。展示している幼生は、3回脱皮した現在では体長(脚を除いた体の長さ)が1センチほどしかありませんが、これから7〜10日おきに脱皮して大きくなり、約1か月後には2〜3センチに成長する予定です。その後、透明なエビに変態したら展示は終了です。ぜひお早めにごらんください。

写真:ミズクラゲに乗って触手を食べるウチワエビの幼生

〔葛西臨海水族園 飼育展示係 村松茉由子〕

(2014年02月28日)



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