ニュース
花のような、星のような、トリノアシの骨板
 └─葛西  2013/09/27

 葛西臨海水族園で先日、水槽の清掃をしていたところ、直径7ミリほどの不思議な形をした小片が、底砂の上にいくつか落ちているのを見つけました。

 以前以下の記事でキホウボウを紹介したのと同じ「深海の生物I」の水槽です。
 ・「ひげとひれすじで海底を探索、深海魚キホウボウのくらし」(2013年09月13日)

 この小片を取り上げてよく観察してみると、その形は5枚の花びらをもつ花のようであったり、5つのとんがりをもついわゆる星形だったりします。深海に咲く花? 海底に落ちた星?
 何とも雅(みやび)で詩的な感じがしますが、実はこの小片は水槽で展示している生物の体の一部なのです。

 その生物とは、深海に生息するウミユリのなかま「トリノアシ」です。その姿は「ちょっと不気味なユリの花」といった感じで、茎の部分から生える巻枝によって水槽内の岩や壁に張り付いています。このトリノアシが調子を崩すと、茎の部分が脱落し、バラバラの薄い骨板になってしまいます。茎の大部分は正五角形の断面をしているのですが、上部の方は形が変わるようで、花形や星形の骨板が出てきます。

 とてもきれいな形をしているので、水族園に来た方にもぜひ見ていただきたいのですが、この骨板が落ちているということは、トリノアシが調子を崩しているわけで、飼育担当としては放っておくわけにはいきません。

 ということで、今回拾った骨板をいつでも見られるように、水族園2階情報資料室に置いておきます。お気軽にスタッフに声をかけていただき、間近でごらんください。じつは、5枚の花びらにはトリノアシがどのような生物のなかまかを示すヒントが隠されています。水族園で実物を見て考えてみてください。

写真上:花形や星形の骨板
写真中:脱落したトリノアシの茎
写真下:水槽のトリノアシ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2013年09月27日)



ページトップへ