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シフゾウ「アオバ」の繁殖行動
 └─多摩  2013/07/19

 みなさんはシフゾウという動物をご存知ですか? 一見シカのように見えますが、野生では150年以上も前に絶滅していた動物で、日本全国では3か所の動物園でしか見ることのできない大変珍しい動物です。

 角はシカ、頭はウマ、体はロバ、ひづめはウシに似ていますが、そのどれでもない動物ということで、「四不像」(シフゾウ)という名前がつけられました。

 そんな不思議なシフゾウを、多摩動物公園ではオス1頭、メス3頭の合計4頭を飼育しています。

 シフゾウのオスの角は、シカと同じように毎年生えかわります。12月末ごろに古い角が落ち、その数日後には皮膚に覆われた角が生え始めます。伸びた角は5月中旬から皮膚が剥がれ、角が完成します。角が完成するとオスは繁殖期に入ります。 

 多摩動物公園のオス「アオバ」も立派な角が完成し、2013年6月下旬から繁殖期に入りました。ふだんはおとなしい性格のアオバも、徐々に気が強くなり、繁殖期特有の行動が見られるようになりました。

 その1つが鳴き声です。いつもは鳴かないシフゾウですが、繁殖期のオスは「ゴゴゴ……」と低く大きな声で鳴きます。日中も頻繁に鳴いているので、少し足を止めて観察していると聞くことができるかもしれません。

 またシフゾウのオスは繁殖期には、1か月ほどほとんど何も食べない時期があります。現在アオバは明らかに食欲が落ち、日中もほとんど餌を食べません。繁殖期のピークが過ぎると食欲も戻るそうですが、シフゾウ担当になって1年目の私にとっては、非常に不安な日々が続いています。

 メスたちにアピールを繰り返すアオバですが、今のところメスたちはまったく関心を示していません。アオバのお気に入りはメスの最高齢「エリー」(15歳)で、若いメスにはない魅力があるのか、エリーにゆっくり近づいては逃げられ……を繰り返しています。

 そんなアオバの片思いの行方をぜひ見に来てください。

写真上:「アオバ」の完成した角
写真下:「エリー」の後を追うアオバ

〔多摩動物公園南園飼育展示係 伊藤達也〕

(2013年07月19日) 



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