葛西臨海水族園東京の海エリアの2つ目の水槽「小笠原 しおだまり」ではタマカエルウオを展示しています。世の中広いもので、魚といえば「水」がつきものですが、この魚はなんと水が苦手(?) です。
タマカエルウオは、八丈島以南小笠原諸島や琉球列島などの波が激しく打ちつける磯に生息しています。しかし水の中にいるのではなく、岩の上をジャンプし、打ち寄せる波をよけるようにしてくらしています。ときには、波に流されて水に落ちてしまうこともありますが、そんなときは水面を跳ねるようにジャンプしながら急いで岩に登ります。ジャンプのときは、大きな胸びれで体を支え、体を弓のように反らせますので、そのようすは水槽で見てください。
こんなふうに水に入るのが苦手なタマカエルウオは、陸上で皮膚呼吸ができる魚です。皮膚で呼吸をするためには、皮膚が濡れていなければならないので、波しぶきがかかるところから離れられないのです。そんな彼らは濡れた岩場でくらし、岩に生えたコケなどをかじりとって餌にしています。
タマカエルウオがなぜ水から出るようになったのかはよく分かっていませんが、水から出ることによって、大きな魚などの敵から襲われにくくなるからかもしれません。また、水中に比べて岩の上に生えたコケは競争相手も少なく、タマカエルウオたちがほぼ独占できるからかも知れません。
タマカエルウオに限らず生き物の世界では、このように敵から逃れてほかの生き物があまり来ない場所で生活したり、少ない餌を奪いあうのではなく食べ分け・棲み分けをするものなどがよく見られます。
水族園の水槽を見て、変わった生活をしている生き物を見つけたら、なぜそんな生活をしているのかちょっと想像してみるのも面白いかもしれません。
写真:岩の上でくらす魚「タマカエルウオ」
〔葛西臨海水族園飼育展示係 浅野晃良〕
(2013年06月21日)
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