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アジアゾウ舎、新たな仲間を迎えて改修後の再開
 └─多摩  2013/03/08

 多摩動物公園のアジアゾウ舎は、2012年秋から2013年3月まで約4か月間、改修工事のため観覧を制限していましたが、いよいよ3月中旬から観覧を再開します。

 改修工事は、スリランカゾウ「アヌーラ」(オス、60歳)の飼育環境を改善するためと、今回スリランカから寄贈される新しいゾウを迎えるためにおこないました。

 改修箇所は、まずPCウォール(protected contact wall)の設置です。これはゾウの健康管理や治療などの際に壁を隔てて安全におこなうことのできる装置です。また、全面コンクリートだった運動場床面の一部を土や砂に改良したり、夏場の日よけやミスト装置、放飼場内のスロープに転落防止柵の設置など多岐にわたりました。

 再オープンにあたり、スリランカのピンナワラにある「ゾウの孤児院」から、「アマラ」(メス、8歳)と「ヴィドゥラ」(オス、5歳)が来園しました。アマラ(Amara)とは「永遠・不死」、ヴィドゥラ(Vidula)とは「智・賢さ」という意味です。
 現在は、現地から同行した象使い(マフー)の指導により、寝室と運動場とを行き来する訓練や運動場に馴れる訓練を毎日おこなっています。

 スリランカのピンナワラ「ゾウ孤児院」で、なぜこの2頭が選ばれたのかをお話しましょう。この孤児院は1975年に開所され、何らかの事情により野生でくらせなくなったゾウなどを保護しています。2012年末で、おとなとこどものゾウ合わせて83頭が保護されています。孤児院から海外の動物園などに贈られるゾウは、スリランカ国内の法令により、孤児院生まれの生後5年以上の個体に限られます。2011年には孤児院で15頭が生まれましたが、これらのゾウが孤児院を離れるのは2016年以後ということになります。

 今回、スリランカと日本の友好60周年を記念してゾウが寄贈されるにあたり、孤児院生まれの5歳以上の個体の中から2頭が選ばれました。

 メスのアマラはピンナワラで美しいゾウだといわれてきました。容姿の美しさももちろんありますが、耳が大きいためです。スリランカでは、耳の大きさがよいゾウの印だそうです。

 オスのヴィドゥラは我が物顔で孤児院のバックヤードを走り回っていた元気なゾウで、日本に来てからはアマラにべったりの甘えん坊です。

 これまでアジアゾウ舎で過ごしてきたアヌーラは、1993年11月にメスの「ガチャ」が死亡して以来、久しぶりに別のゾウと再会しました。しかし、飼育係員か見る限り何の変化もありません。3頭はゾウ特有の超低周波の音声で会話をしているのでしょうか?

 アヌーラは現在ムストと呼ばれる攻撃的な時期の最中で、夜中に仕切扉を叩いたりしますが、アマラ、ヴィドゥラは、その音にも無関心で横になって寝ています。2頭は、ピンナワラで多くのゾウとくらしていたので、少々のことでは動じないのかも知れません。

 今後、アヌーラと2頭のゾウを同居させることについては、年齢差、体力差、力量差などまだ未知数が多いため、柵越しで対面したときのようすを観察したうえで検討していきます。

 そのため3月中旬からの展示は、しばらくの間アヌーラのみの場合とアマラまたはヴィドゥラの場合の2つのパターンになります。 新装オープンのアジアゾウ舎に、ぜひお越しください。

写真上:マフーの訓練を受けるメス「アマラ」
写真中:改修後のゾウ舎、左下にPCウォールが見える
写真下:ビンナワラ「ゾウ孤児院」

〔多摩動物公園南園飼育展示係 山川宏治〕

(2013年03月08日)



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