目には青葉 山ほととぎす 初がつお(素堂)
俳句や川柳にも登場し、古くから日本の食卓で親しまれてきた魚の一つ、カツオ。そんなカツオたちが水族園にやってきました。
今回水族園にやってきたのは、今年生まれたばかりの赤ちゃんカツオたちです。日本近海に回遊してくるカツオは、フィリピン海で生まれ、黒潮に乗って日本までやってくると言われています。わたしたちは、そのカツオたちが鹿児島沖を通るときを狙って採集します。
まず漁師さんにたのんで、ていねいにカツオを一匹ずつ釣ってもらいます。釣れたカツオは、海上に設置した生け簀の中に入れ、しばらく餌をあたえて育てます。カツオを運ぶときにむずかしいのは、大きな入れ物の中で泳がせながら運ばなければいけないことです。
そこで、生きた魚を運ぶための活魚船と、うしろが水槽になっていて、ふだんは海水を運搬しているトレーラーを使います。また、カツオは「擦れ」に弱いので、船やトレーラーに積み替えるときなど、人の手によって動かすときには特別な布で作った担架で水ごとすくったり、特別なタモ網を使ったりして、カツオへのダメージを最小限におさえます。
鹿児島県から神奈川県の三崎までは、活魚船で3泊4日の船旅です。私はカツオといっしょにクルージング……の予定だったのですが、前線と台風の影響で、途中二度も時化(しけ)にあい、不覚にも船酔いしてしまったのです。しかしカツオたちは時化などものともせず、元気に餌を食べていました。そして船が三崎に着くと、今度はトレーラーにカツオを積み込み、一路、旅の終着点である水族園を目指します。
現在カツオたちは、長旅の疲れも見せず、なかよく群れになって、大水槽の中をところせましと泳ぎ回っています。でも、カツオたちをよ~く見てみると、あれれれれ? 魚屋さんにならんでいる死んだカツオとは何かが違うのです。そうなんです、生きているときにはカツオのトレードマークともいえる「あれ」がないのです。
ぜひ水族園に来て、じっくり観察し、「あれ」を見つけてください。また、カツオと同様の方法で採集し、輸送方法をするマグロ類を紹介したオリジナルビデオ“水族園のマグロ”が情報資料室にありますので、ぜひご覧ください。
〔葛西臨海水族園調査係 雨宮健太郎〕
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