上野動物園子ども動物園では、ウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、アヒル、ブタ、ウマ、ロバなど、ふれあい活動に適した、おとなしい家畜を飼育しています。彼らを対象とした「健康診断」についてご紹介しましょう。
「ふれあいコーナー」でウサギやモルモットに触ったり、ヤギやニワトリのいる「なかよし広場」で遊んだりした後は、来園者の方には手洗いをお願いしています。これは動物が汚いからではありません。人の手から雑菌が動物に付着し、その雑菌がほかの来園者に移る可能性があるからです。
とはいえ、動物をお風呂で洗ったりするわけではありません。健康な動物は免疫細胞のおかげで病原菌から体を守っているので、簡単に病気になることはありません。しかし、病原菌の有無のチェックは必要です。そのため、動物園では細菌検査と除菌を定期的に実施しています。
検査のためには、あらかじめ各部屋ごとに飼育している頭数をリストにまとめ、検査漏れが起こらないよう注意しながら全頭の糞を集めます。ハツカネズミからウシまで全頭の糞を集めるのは大変です。ウサギやモルモットなど小動物を担当している私は、小さな糞を37部屋分集めました。ハツカネズミの糞は米粒よりも小さく、しかも好奇心旺盛なネズミたちが集まってくるので2人がかりで作業を進めました。
ヤギとヒツジは1頭ずつ詳しく調べることになりました。飼育担当者2人と動物病院の獣医師が力を合わせ、捕まりたくない動物たちと30分間も鬼ごっこをして、トカラヤギ24頭とヒツジ4頭の検査を終えました。見島牛、口之島牛はいつも一緒にいるので、どちらの糞なのかを見きわめるのが難しく、排便するまで1時間30分も見張っていました。
糞から病原性をもつ細菌が分離されなければ、安心して動物たちをみなさんの前に出すことができます。病原菌が見つかったら、裏側に隔離して抗生剤を投与し、病原菌がなくなったことを確認するまでは出しません。
最近、トカラヤギのユウ、レモン、アンズ、ユズが広場に出ていないのは、病原菌が検出されたためです。現在、彼らが一日も早く出られるよう、検査と治療を続けています。また会える日を楽しみにしていてください。
動物に病原菌がつくことを防ぐために、また、ふれあいを介して人から人に病原菌が渡らないようにするために、ふれあいの後だけでなく、その前に手を洗うことも大切です。どうぞご協力ください。
写真上:ヤギから細菌検査用のサンプルを採る
写真下:好奇心旺盛なハツカネズミたち
〔上野動物園子ども動物園係 佐藤恵〕
(2012年12月21日)
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