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エメラルドグリーンの海!? 青潮に襲われた西なぎさ
 └─葛西  2012/10/20

 2012年9月27日の午後、私は葛西臨海水族園の最寄り駅である葛西臨海公園駅から東京駅方面に向かう電車の中にいました。車両が荒川に架かる橋を渡る際にふと海の方を見ると、東京ディズニーリゾートの前から水族園前の人工なぎさ沖にかけての海が青緑色をしていました。「海が青いのは普通でしょ」と言われそうですが、水族園前の海は東京湾奥の干潟ということもあり、遠くから見ると、暗い茶色と表現できるような色をしています。車内からその異様な青緑色を見て、「青潮」(あおしお)が発生している!と思った私は、次の駅で電車を降り、急いで水族園に引き返しました。

 「青潮」とは、海底に溜まっていた酸素をほとんど含まない海水が、風などの影響で表面に上がってくる現象です。その中に含まれている硫化水素が海面近くの酸素と反応してできた物質によって、海がにごった青緑色に見えます。この状態が長く続くと、有毒の硫化水素と酸欠の海水によって、水中の生物が大量に死んでしまうこともあります。

 水族園に引き返し仲間の職員に「青潮が発生しているようだ」と伝えた後、西なぎさに行ってみると、海から硫化水素臭(いわゆる温泉地の臭い)がして、海面のあちらこちらで魚がもがくように泳いでいます。沖では多くのカモメが次々と海面に舞い降りていて、浮かんできた魚を食べているようです。そのうちに、今まで見たこともない大量のアカエイが、波打ち際で苦しそうに泳ぎ始めました。そのほかにも、全長50センチ近い立派なクロダイや体の幅が60センチほどのツバクロエイ、ふだん見ることのないクサフグやシロギスなどが打ち上がってきました。また、魚以外でもタイワンガザミやモクズガニ、シラタエビなどの甲殻類がグッタリとしています。ほんの一部の魚ですが、マハゼやシロギス、コノシロ、アカエイなどを水族園から運んだきれいな海水に入れると、また元気に泳ぎ出したので、これらを水族園に持ち帰りました。

 しばらくして波打ち際を歩いてみると、マゴチやヒイラギ、ボラ、透き通った稚魚など大量の魚が打ち上がって死んでいました。東京湾では毎年2〜3回ほどの青潮が発生していますが、水族園前の海で見たのは初めてでした。今回の青潮は、2012年9月23日に東京湾最奥部の千葉県船橋辺りで最初に確認されたようです。東京湾で青潮が発生する要因となる北〜北東の風が吹き続けて、青潮の範囲が拡大していったようです。 西なぎさの青潮は、翌日昼には解消したようですが、生物にどれほどの影響があったのか、環境はどれくらいで元に戻るのか心配しています。

【青潮から逃げるアカエイの動画】
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写真上:水族園前の海がエメラルドグリーンに
写真中:波打ち際に大量のアカエイ
写真下:多くの生物が打ち上げられた

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2012年10月20日)



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