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チョウたちも夏バテ!?
 └─多摩  2012/09/14

 多摩動物公園昆虫生態園では、年間を通じて18種、約800匹のチョウを見ることができます。しかし、よく見てみると季節によってその種類や数に変動があります。 

 9月現在、たくさん飛んでいるのはオオゴマダラ、カバタテハ、タテハモドキ、シロオビアゲハなどです。これらは一年中見ることができる種類です。

 一方、時期によって数が少なくなったりいなくなったりするチョウもいます。今の時期は、ツマムラサキマダラやアサギマダラ、キチョウなどですが、なぜ、少なくなるのでしょうか?

 ツマムラサキマダラとキチョウについては、卵がほとんど採れなくなるためです。ツマムラサキマダラの食草となるキョウチクトウやキチョウの食草となるモクセンナは、生態園内には一年中生育しており、ふだんはそこに産卵します。しかし、夏の暑い時期になると産卵数は激減してしまいます。秋になり涼しくなると、再び産卵するようになるため、暑さのせいで産卵しなくなるのではないかと考えています。あるいは、生態園にいるアリが卵を食べてしまっているのかもしれません。

 アサギマダラの成虫は、野外では夏になると高地などの涼しい場所に移動することが知られています。暑いところが苦手なようです。そのため、夏の昆虫生態園では、せっかく卵から育てた成虫を放しても暑すぎてすぐに死んでしまいます。そこで、あえて羽化させない作戦をとり、幼虫を10℃くらいの冷蔵庫で飼育しています。こうすることで、幼虫の成長が遅れ、羽化する時期を涼しい秋にずらすようにくふうしています。

 10月を過ぎると、これらのチョウも調子を取り戻してきます。青紫色に輝く翅のツマムラサキマダラ、上品で涼しげな浅葱色の翅のアサギマダラ、可愛らしい黄色の翅のキチョウたちもきっとその数を増やしてくることでしょう。季節によって変わるチョウの種類をぜひ見に来てください。

写真上:ツマムラサキマダラ
写真中:アサギマダラ
写真下:冷蔵中のアサギマダラの幼虫

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 草野啓一〕

(2012年09月14日)



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