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腸を出してしまって大丈夫? バイカナマコ
 └─葛西  2012/09/07

 葛西臨海水族園の特設展示「タッチンフィーリン」の観察用水槽で、バイカナマコを展示しています。バイカナマコは、暖かい海にすむ大型のナマコです。

 2012年7月12日、水槽のバイカナマコの近くに、内臓のようなものが落ちているのを見つけました。ひも状で、半透明の膜の中には物が詰まっていました。じつは、これはバイカナマコが自ら放出した腸だったのです。

 ナマコ類の中には、敵に襲われると自分の腸を食道から切り離し、肛門から外に捨ててしまう自衛本能をもつなかまが知られています。今回、バイカナマコが腸を出してしまった原因はわかりません。発見したとき、同居しているイシダタミヤドカリが腸をおいしそうに抱えていたことから、この行動は敵の気をそらすのに有効だと思われます。

 水槽のバイカナマコは長さ20センチ程度ですが、その体から出た腸は、太さが直径約5ミリ、長さが40センチもありました。腸の中に詰まっていたのは砂です。バイカナマコのように砂の上を這ってくらすナマコは、砂を食べて生活しています。実際は、砂のまわりの栄養分を吸収して、残りの砂は糞として排出します。

 腸を出してしまったナマコはどうなると思いますか? ご安心ください。環境が良ければ腸を再生することができます。しかし、ダメージも大きいようで、水槽のバイカナマコは、その後岩の間に入ったまま何日もじっとしていました。やっと表に出てきたのは、約1か月後の8月15日でした。糞を確認したのは、さらのその1週間後でした。回復したようすにほっとし、その再生力のすごさに驚かされました。

写真上:復活したバイカナマコ
写真中:バイカナマコの出した腸
写真下:腸の中の砂

〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕

(2012年09月07日)



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