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オスのやる気スイッチ入った? トビハゼの産卵前行動
 └─葛西  2012/08/17

 潮が引いたあとに現れる一面茶色い泥干潟。そこでくらすトビハゼは、陸上で生活するユニークな魚ですが、全長が10センチほどと小さく、体色も茶色で干潟に同化しており、あまり目立たない地味な魚かもしれません。そんなトビハゼが、とても目立つシーズンがやってきました。それは繁殖シーズンです。東京湾での繁殖シーズンは6〜7月がピークとされますが、これよりちょっと遅れ、葛西臨海水族園の「泥干潟」水槽では今が繁殖シーズンです。

 トビハゼの産卵前行動は、メスよりオスの方が断然努力しているように見えます。まず、オスはメスに産卵してもらうためのマイホーム(巣穴)を掘ります。掘るといっても、地中の泥を口に頬張り、地上でこれを泥粒として吐き出すという行動を何度も繰り返して、深さ20〜30センチの巣穴を作ります。このマイホームが完成すると、オスは結婚相手(メス)を探します。

 トビハゼの繁殖シーズンは、とくに日中、干潟の表面温度が急上昇しますが、館内では冷房中のため水槽内の気温があまり上がりません。そこで、干潟の気温上昇を再現するため、水槽内に園芸用ヒーターを設置して日中加温します。すると俄然、オスのやる気スイッチが入るようで、体色や行動の変化として現れます。

 まず、体色はふだんのやや濃いめの茶色からクリーム色へと変化します。さらにメスに対して求愛を猛アピールするときには、体色が赤みを増し鮮やかな色に急変するとともに、左右の頬をプクッと大きく膨らませ、体の後半部を左右にクネクネと動かし続けます。なんとも悩ましいとさえ思える動きです。

 やる気スイッチの入ったオスは、水槽内でとても目立ちます。メスにもやる気があれば、敏感に反応するでしょう。しかし、今シーズン、現在まで結婚の成功率があまりよくないようです。その理由は良く分かりませんが、がんばれ、男たち!

【トビハゼのディスプレイ動画】
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写真:婚姻色の現れたオス(奥)とそうではない個体(雌雄不明)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2012年08月17日)



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