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モウコノウマのふるさとを訪ねて
 └─多摩  2012/06/29

 2012年6月5日、私はこの日をモンゴルのウランバートルで過ごしていました。モンゴルではモウコノウマのことを「タヒ」と呼びます。モンゴル語で精霊という意味です。タヒが「いちど野生から姿を消した」ことや「現在はふるさとの草原に野生復帰している」ことは、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。

 今から20年前の1992年6月5日は、タヒが再びモンゴルの地でくらすようになった記念すべき日でした。

 今回、この20周年を記念して、モンゴル国で写真展やセレモニーがおこなわれ、私は園長とともに出席してきました。

 セレモニーでは、これまでの保護活動の取り組みが紹介され、地元の人たちの歌やダンスが次々と披露されました。とても賑やかなショーが催され、当日や翌日のテレビニュースで繰り返し紹介されていることからも、モンゴルの人たちにとって、タヒ保護への関心や誇りが大変大きいことを強く感じました。

 その後、私はシャワー無し、3泊4日のスケジュールで、タヒの保護区の視察へ出かけました。モンゴルには3か所モウコノウマを保護している地区がありますが、今回訪れたのは首都ウランバートルから西へ約100キロに位置するホスタイ国立公園です。ここはモンゴル国内外からもツーリストが来ることができる比較的アクセスが良いところで、しかも大自然に触れることができる場所です。

 国立公園のレンジャーによるガイドで、タヒをはじめタルバガン(モンゴルマーモット)やアカシカなどの野生動物を観察し、その生態についてもいろいろ聞くことができました。現在この保護区には約270頭のタヒがくらしていますが、レンジャーは基本的に観察するだけで動物のケアをすることはありません。しかし、その観察はとにかく細かく、彼らの研究があるおかげで、タヒの保護事業は円滑におこなわれていることがうかがえました。

 タヒのふるさとから戻ってきて、日々接する多摩動物公園の5頭のタヒたちを大切に大切に飼育していかなければ、と気を引き締める毎日です。いつの日か彼女たちの孫やひ孫が、祖国モンゴルの地にかえる日を想い描いて……。

写真上:ホスタイ国立公園近くにすむ子どもたちの歓迎ダンス
写真下:繁殖にかかわらないオス集団「バチェラー」のグループ

〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤麻里子〕

(2012年06月29日)



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