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尾羽の短いワライカワセミ
 └─上野  2012/06/08

 鳥たちはさまざまな声で鳴きますが、「アハハハ」と鳴く鳥を知っていますか?

 オーストラリアの森林に生息し、昆虫やヘビ、小動物まで食べる大型のカワセミ、答えは「ワライカワセミ」です。名前の由来は、縄張りなどを主張するときなどに鳴く声の「アハハハ」が、人の笑い声に似ているからです。

 上野動物園のバードケージでは、オスを2001年、メスを2006年に多摩動物公園から移動し、ペアで飼育しています。これまで繁殖を試みましたが、交尾、産卵までで、抱卵をせず、孵化には至りませんでした。 

 鳥は巣箱内で繁殖をさせる場合、たとえ飼育係といえども、安易に中をのぞくことはできません。抱卵初期などは、巣に近づくだけでも巣を放棄することがあります。巣箱内での繁殖は、ペアの行動から判断します。雌雄が交代で巣に入れば抱卵、巣の中に餌を運べば育雛(子育て)していると推測できます。

 ワライカワセミのペアは、2012年3月中旬から巣箱に出入りするようになり、21日〜28日からは交互に巣箱に入るようになりました。この期間に産卵から抱卵に入ったものと推測しました。ワライカワセミの孵化日数は25日前後ですので、4月21〜23日が孵化日になります。
 4月下旬〜5月上旬に、巣箱内から聞こえたかすかな声や、ペアが巣の中に餌をくわえて運ぶ行動などから、孵化し育雛がおこなわれていると判断しました。

 5月29日の朝、地面の上にいる巣立ちしたひなを確認しました。孵化日から推定して40日前後での巣立ちです。巣立った幼鳥は、成鳥と比較して尾羽が短いのが特徴です。巣立ち後しばらくの間は、ペアがひなに餌を運んでいますが、餌の種類によっては受け取りません。親鳥がさまざまな餌を運んでくれるのに、食べたいものだけを食べる気まぐれで尾羽の短いワライカワセミのひな、今が旬です。

写真上:ワライカワセミのペア
写真中:ひな
写真下:ひなの短い尾羽

〔上野動物園東園飼育展示係 阿部勝彦・高橋幸裕〕

(2012年06月08日)



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