多摩動物公園では、数年前から近隣地域のゲンジボタル生息地の調査をおこない、導入を試みてきました。並行して、園内の湧水を利用した水路をホタルが生息できる環境にするため、池の浚渫・川幅拡張・外来植物の除去などの整備をおこなってきました。
近年、ゲンジボタルは各地域によって形態、習性、発光行動、生活史が異なるため、離れた場所のホタルを導入することは「その地域に生息しているホタルの特徴を失わせてしまう可能性がある」と考えられています。そのため、地域ごとの特徴を守って、元々地元にいたホタルを復活させようという考え方が広まってきています。
2011年、近隣地域で採集したゲンジボタル成虫から採卵して、孵化した幼虫を大事に育ててきました。
そして2012年3月上旬に、終令幼虫を園内水路に試験放流しました。放流後、雨が降ると水路は増水して水流が速くなるため、幼虫が流されてしまっていないか心配でした。
4月下旬から5月上旬の雨の降る夜に、幼虫は蛹になるため水から陸へ上がってきます。幼虫も発光しているので上陸を確認できます。水路へ確認しに行くと上陸していました。現在は、土の中で蛹となっているころで、水路周辺を歩いて土を踏み固めないように立ち入り禁止にしています。
6月中旬から7月上旬にかけて羽化の調査をおこなう予定です。将来、園内の水路にホタルが定着できるよう、日々奮闘中です。
◎2012年ホタル展「ほたるの光」
開催期間 2012年6月9日(土)〜6月17日(日)
開催場所 昆虫生態園ホタルコーナー
写真:園内水路で上陸した幼虫
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 杉田務〕
(2012年05月25日)
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