2011年秋に京都市動物園から多摩動物公園にダチョウのメス2羽が来園して、サバンナの仲間たちともうまくくらしていました。そう、寒くなるまでは……。
やってきたのは、18歳と3歳のダチョウで、年長の「チヨ」は若い「ヨウ」に比べて来園時からちょっとはかなげな感じでした。さらに、環境の変化もあったのでしょうか、もともと少し抜けていた背中の羽毛はさらに抜け、遠慮がちに餌を食べていたせいか目立って痩せてきました。しっかり食べられるように、日中1羽だけで採食させたり、特別食としてモヤシを餌に追加したりしました(結構好んで食べます)。
なんとか元気に仲間と過ごしていたチヨですが、痩せ気味なのと背中の皮膚が露出しているのとで、11月中旬から、少し寒くなると元気なく座り込むことがありました。
そんなある日、冷たい雨にぬれて体が冷え、立てなくなってしまいました。保温静養をしてなんとか回復し、数日後にはサバンナ放飼場に出て一安心。ところが、やっぱり寒くなると調子が悪くなってしまうので、11月末ころから朝少し外出した後は、保温した室内で過ごす日々が続きました。
しかし、多摩の寒さは羽のない体にはこたえたようで、歳もおしせまった12月末、とうとうぐったりして立てなくなってしまいました。マットやヒーターで保温するほか、点滴や栄養剤の補給など、終日獣医と飼育係がつきそっての看病で命の危機は脱しましたが、これでは長い多摩の冬は越せそうもありません。展示ができなくなりますが、ダチョウの体調を優先し、ボイラーの効くキリン舎別棟(未使用の個別飼育棟)に隔離して、寒い時期は室内で飼育することにしました。
展示できない状態が続き、動物園動物としての役割が十分に果たせないチヨでしたが、ある能力?があることに気づきました。午前中に扉を開けておき、自由に外出したり、寒ければ暖房の効いた室内に帰ったりできるようにしていたところ、午後寒くなる、もしくは雨が降るときは、早めに室内に入ってくるのです。私たち飼育係や天気予報では予想しなかった天気のくずれをしっかりわかっているらしく、気がつくとそれを避けるためにさっさと室内で座っていることがしばしばありました。この「天チヨ報(天気・チヨ予報)」は結構信用度が高く、私たちは動物管理の上で参考にしていました。
そして多摩にも春が来て暖かくなると、チヨの動きも徐々に元気になってきました。4月に入り、3か月半のお籠り生活を経て現在は、大放飼場で展示できるようになりました。残念ながら、まだ背中の羽が十分に生えていないので寒そうに見えますが、サバンナで元気に過ごせるように見守りたいと思っています。
写真上:キリン舎パドックで日向ぼっこ中のチヨ
写真下:年末に保温治療中のチヨ
〔多摩動物公園北園飼育展示係 高原由妃〕
(2012年04月20日)
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