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キリン版、未成年の主張とは(ユリアの鳴き声)
 └─多摩  2012/03/16

 2011年8月6日に多摩動物公園で生まれたアミメキリン「ユリア」の人工哺育は順調に進み、11月上旬に放飼場で群れ入れをしてからは、離乳のため徐々にミルクの量を減らしていきました。

 一時は1日4回で総量7600CC与えていたミルクも、2012年の年明け後まもなく1日1回となり、2月に入ってからは総量2000CC以下となりました。反比例するように、乾草やペレット類の採食量が上がり、みるみるうちに体が立派になってきたので、本格的に離乳と寝室での同居のタイミングを考えるようになりました。

 2月中旬以降、ミルクの量を1400CCとし、この量を最後にいつ離乳しようかと思案していました。ユリアは固形物を採食するようにはなりましたが、ミルクが減量されていくたびに、ミルクに対する執着は強くなっているように感じていました。そんなある日のこと……。

 「モ〜」という声が聞こえ始めたのです。初めはキリン舎の向こう側にいる繁殖期を迎えたペリカンたちの鳴き声かと思っていましたが、数日後その声がキリン舎の中からはっきりと聞こえてくるのが分かりました。

 意識して耳をすましてみると、多いときは朝だけで10回くらい聞こえてきました。今まで生でキリンの声を聞いたことは1、2度しかないので、きつねにつままれたような気分です。しかし、どんな顔をして鳴いているのか見に行くと、ユリアは決して鳴きません。かえって、ミルクをくれると思うのか、せがむような動きをするだけです。

 2月いっぱいで哺乳をやめ、3月からは完全に親たちと同じ餌のみにしたところ、鳴く回数がとたんに増えてきました。担当者が姿を見せると鳴かないので、ICレコーダーを使って録音してみることにしました。ちょうど1時間録音して再生してみると、なんと113回も鳴き声がとれました!! しかも「モ〜」だけではなく、「ア〜」とか「ウ〜」とか「アッ」みたいな短い声もありました(あまり正確な表現ではありませんが)。外に聞こえてきたのは大きい声だけだったようです。

録音した鳴き声
 (mp3形式、約30秒。最初と最後に鳴き声が聞こえます)

 鳴き声は、離乳1週間後の3月7日まではよく聞きました。しかしその日以降、夜1頭でいたのを群れと一緒に過ごすようにしてからは、まったく聞かなくなりました。もう寂しくなくなったから? いや、それだけではなさそうです。これまでは、決められた分量のペレットしか食べられませんでしたが、群れと一緒だと大好きなペレットが山のようにあります。乾草だって食べきれないほどあります。そうです、きっとユリアが声を出してまで言いたかったこと、それは……「ミルクくれ〜」「ペレットくれ〜」ということだったようです。

 今は満足しているようですが、次はどんな主張をしてくるのかちょっと不安ですが、楽しみでもあります。

「アミメキリンの赤ちゃん誕生」(2011年08月16日)
「サバンナの元気な子どもたち」(2011年09月09日)
・動画「人工哺育で育つユリア」 「その2」

写真:群れの中の「ユリア」

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

(2012年03月16日)



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