ニホンコウノトリにとって、春は伴侶を見つけ繁殖に入る時期です。国内で2番目に多くのニホンコウノトリを飼育している多摩動物公園では、遺伝的多様性を保つため、家系や血縁関係の近さなどさまざまな要素を考慮して、ペアをつくっています。
しかし、一口にペアづくりといっても簡単ではありません。排他性が強いニホンコウノトリは、オスとメスを1羽ずついっしょにすると、オスがメスを攻撃して、ケガをさせてしまうことがあります。こちらの都合でペアにはなってくれないのです。
そこで当園では、集団お見合い方式をとっています。これは、複数のオスと複数のメスをひとつのケージに入れ、好きな相手を選ばせるのです。ケージ内の密度が高いせいで互いに牽制しあうのか、あまり闘争も起きません。このお見合いは、モウコノウマ上にあるコウノトリ舎の「お見合いエリア」というところでおこなわれます。現在は、オス3羽・メス3羽を飼育しています。
ここで仲良くなったペアは、小屋の上にならび、くちばしを叩き合わせクラッタリングをしたり、巣をつくったりします。クラッタリングは、鳴くことができないコウノトリがおこなうコミュニケーションの手段です。
ペアになると縄張りを主張するようになり、攻撃性が高まるため、ペアは個室に移します。すると、残りのメンバーで、またペアができ……ということを繰り返していくのです。そして個室に移ったペアは、うまくいくと有精卵を産み、子孫を残します。
6羽は、どの組み合わせでもよいようになっていますが、とくにがんばってもらいたいのは、右脚と左脚に白の色環を付けたオス、通称「豊橋くん」です。彼は、豊橋総合動植物公園からやってきました。国内では飼育羽数の少ない血統のオスなので、ぜひよい相方を見つけてほしいものです。2012年1月11日に「お見合いエリア」にきた6羽は、まだ環境に慣れないのか、ぎこちないようすですが、これからの盛り上がりに期待します。
写真上:観覧通路側から見たお見合いエリアのようす
写真下:期待の「豊橋くん」
〔多摩動物公園南園飼育展示係 大橋直哉〕
(2012年01月20日)
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