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サメ水槽のマイワシの群れ
 └─葛西  2012/01/20

 葛西臨海水族園では、館内に入ると最初に「大洋の航海者サメ」の水槽があります。この水槽では、サメたちと一緒におよそ2000尾のマイワシの群れを展示しています。

 2000尾のマイワシはきれいに群れをつくり、一斉に向きを変えたり、ふくらんだり、伸びたりしながら泳ぎ回っています。その動きは、まるで一つの生き物のようで、アメーバにも似て見えます。群れは、同じ水槽を泳ぐサメたちを避けるため、盛んに方向転換をします。そのときには、マイワシの銀色の体表が一斉にきらきら光ります。

 マイワシは日本近海から朝鮮半島、南シナ海の北部まで分布し、群れで回遊しています。人が食べても美味しいのですが、海では大型の魚類などに狙われるので、群れをつくることは多くの敵から身を守るのに役立ちます。

 群れの中のだれかが敵を発見すればみんなで一斉に逃げることができます。群れを襲おうとしても、1尾に狙いを定めることはとても難しく、たとえ1尾が捕まったとしても、群れの残りは逃げることができます。群れをつくることで、個々の生き残れる確率が上がると考えられています。マイワシの群れは、リーダーがいて統率しているわけではありません。 

 この水槽のマイワシは、半年ほど前までは水面近くをバラバラに泳ぎ、きれいな群れではありませんでした。同居している大型のアカシュモクザメは海底を探って餌を見つけるサメなので、マイワシを襲って食べることはほとんどありません。そのためマイワシたちもリラックスしていたのでしょう。

 2011年6月22日、それまで1尾しかいなかったツマグロという小型のサメを4尾に増やしました。ツマグロは泳ぎが素早く、ほかの魚などを襲うことがあります。新しいツマグロたちは、水槽に入れるとすぐにマイワシに強い興味を示しました。

 マイワシたちは簡単に食べられたりはしませんが、時折ツマグロにヒヤッとさせられるのか、たちまちきれいな群れをつくるようになりました。海にいるときのような緊張感が出てきたようです。

 今ではマイワシの群れはいつでもきれいな形を見せています。海の中で見るように、銀色に光りながら泳ぎ回るマイワシの群れをぜひ見に来てください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2012年01月20日)



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