ニュース
昆虫園の巨大生物シリーズ、その1「オオコノハギス」
 └─多摩  2012/01/13

 2011年暮れに多摩動物公園昆虫園では海外の大型昆虫を2種導入しました。今回紹介するのはそのうちの一種、オオコノハギスです。

 オオコノハギスは、名前の通り「木の葉」に姿を似せている「大」型の「キリギリス」のなかまです。マレーシアなどの森林に生息していて、さまざまな植物の葉を食べてくらしています。非常に細くて長い枝のような脚と、体を覆う葉のような翅が特徴的で、体が大きいこともあって、一見すると強そうな昆虫に見えるのですが、性質は非常におとなしく、そしてまったく動きません。どのくらい動かないかというと、開園してから閉園するまで立ち位置が変わりません。食事もほとんどせず、巨体に似合わず1日に食べる量は小松菜1枚程度です。

 植物に姿を似せて外敵から身を守る「擬態」をおこなっている昆虫ですが、10センチを超える体長なので、さすがにこれでは隠れる意味がないだろうと思っていました。しかし展示を目の前にしても、来園者の方たちからは「この水槽、中に何もいない?」という声が良く聞かれるので、大きすぎてかえって見つけにくいようです。

 もちろん現地ではこの擬態だけで身を守ることは難しいので、外敵に襲われた場合の最終手段をもっています。彼らキリギリスのなかまが、鳴く虫であることを利用した「鳴き声」です。オオコノハギスは、体をはさまれたりつつかれたりすると、左右の翅をこすり合わせて、大きな音を出して追い払おうとします。日本でもセミがこのような反応をしますが、オオコノハギスの場合は、音量がケタ違いで、作業中に誤って手が体に触れ目の前で鳴かれたときには、あまりの音量に思わず耳を塞いでしまったほどです。本来ならぜひ来園時に聴いていただきたいのですが、暗くしても滅多に鳴かない気まぐれなので、録音も難しそうです。

 ほとんど動いてくれないため、行動の観察はしづらい昆虫ですが、どうしてここまで大きくなったのか、東南アジアの環境の豊かさを想像しながら見てみるのも楽しいかもしれません。

写真上:オオコノハギス
写真中:大きな卵
写真下:発音器

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕

(2012年01月13日)



ページトップへ