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2011年のオランウータンの「スカイウォーク」
 └─多摩  2011/12/02

 多摩動物公園では、オランウータンの「スカイウォーク」が2011年冬季の休止期間に入りました(お知らせはこちら)。

 そもそもスカイウォークとは、樹上生活をするオランウータンが木々を渡り歩く行動を再現するために作られたものです。高さ15メートル前後のタワー9基を150メートルのロープで繋ぎ、そこをオランウータンが渡ります。

 今年のスカイウォークは次の2組でにローテーションを組んでおこないました。チャッピー、ポピー、ミンピーグループと、ユキ、キキグループです。チャッピーグループは、チャッピーが母、ポピーが息子(兄)、ミンピーが娘(妹)の親子、もう1つのキキ、ユキグループは血縁関係はありませんが、とても仲のよい2頭のペアです。スカイウォークをおこなう上で、今年はある困ったことが起きました。

 午前11時30分、スカイウォーク出発地点へつながるシュート(動物用通路)の扉を開きます。しかし、チャッピー親子グループは、ミンピーが運動場をグルグル逃げ回り、出発地点になかなか出ません。こんなとき、チャッピーが捕まえにいき、これまでは事なきを得ていました。しかし、めきめきと運動能力を身につけているミンピーを、チャッピーは捕まえることができなくなってきました。ミンピーが楽しげに逃げ回るのを、チャッピーは呆然と眺めるはめに。

 キキ、ユキグループでは、遊び好きのキキが飼育係を困らせます。シュートの扉が開くと、自分で扉を上げ下げするのに夢中になってしまうのです。最初はなぜ? と思っていましたが、どうやら困り果てる飼育係の反応を見るのが楽しいようです。

 ミンピーもキキも、スカイウォークをしたくないというより、遊びの気持ちが強いように見受けられます。それならば、と私たち飼育係も身を隠したり、夏の暑い日にはホースの水をチョロチョロ出して水鉄砲にしたり、興味をそそるようなアイテムを使うなど、あの手この手を使って誘い出します。どれも初めは効果があるのですが、飽きてくると遊びを再開してしまうといういたちごっこの末、最終的には出発地点へ出ていきます。
 しかし出発地点まで来ても、オランウータンがすぐにスカイウォークを渡るとは限りません。渡るのはオランウータンの気分次第なのです。スカイウォークタワー上の台座で日向ぼっこしたり、人間観察をしたり、自由にその場を楽しんでいます。いつ渡るのか、こればかりは私たち飼育係でも読めません。

 お客さんの中には、しびれをきらしてその場を去ってしまう方もいらっしゃいますが、じつは渡らない日はありません。遅くなっても必ず渡ります。予測不可能なこのスカイウォークも、考え方を変えれば、生き物だからこそ起きることで、オランウータンにも気分があるのだなと私は思います。見ている方にとっても、渡り方がその日によって変わるので、何度見に来ても違う楽しみ方ができるでしょう。
 今年のスカイウォークは残念ながら終了し、来年春までお休みです。来年のスカイウォークはどうなるでしょうか、どうぞお楽しみに!

写真上:スカイウォークを渡る「チャッピー」
写真中:日向ぼっこ中の「ポピー」
写真下:「ミンピー」を追いかける「チャッピー」

〔多摩動物公園南園飼育展示係 徳田雪絵〕

(2011年12月02日)



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