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深海生物採集の本格シーズン到来
 └─葛西  2011/12/02

 葛西臨海水族園には、深海の生物を展示するコーナーがあります。じつは、深海コーナーには、われわれ水族園のスタッフが採ってきた生き物がたくさんいます。

 冬が訪れ気温が低くなってくると、海の表層近くと、深海生物採集をおこなう水深数百メートルあたりの水温差が小さくなります。このため、深海生物への水温差による影響がもっとも少ない冬から春が、深海生物の採集に適していて、この時期を狙って採集に出かけます。

 2011年11月下旬、深海採集シーズンの幕開けとして、静岡県沼津市戸田の漁業者に協力してもらい、深海底曳き網漁に同行してきました。
 戸田の底曳き網漁では、水深300メートル付近の海底に袋状の網を落とし、しばらく引きずった後、船上に引き上げて漁獲します。漁業者が主に狙っているのは、タカアシガニ、アカザエビ、アオメエソなどです。

 深海は、高い水圧がかかり、太陽の光が届かず、低い水温という特殊な環境のため、底曳き網漁で漁獲される深海生物の多くは、生きた状態では上がってきません。漁獲物の中から運よく生きたまま上がってきた生物を、スタッフが選別・採集し、水族園まで輸送しています。

 採集当日は、夜明け前の5時に出港し、日の出とともに漁を始め、午後2時ぐらいまで5回にわたり操業を繰り返し、ミドリフサアンコウやキホウボウ、メンダコなどを採集することができました。
 なお漁獲した深海生物の中には、めったに入手できないものが多く、標本としても価値が高い生物が多数います。今回の採集では、深海ボトルウォッチングに用いる標本用生物を集めることも目的の一つで、発光器を持つハダカイワシやサンゴイワシ、深海性小型サメ類のフジクジラなどを持ち帰ることができました。

 深海ボトルウォッチングの第1回目は2011年12月3日(土)です。詳細は、こちらを確認の上、ぜひご参加ください。

 今後は、水族園のホームグラウンドである東京湾に生息する深海の生き物を収集する計画もあります。深海コーナーの展示生物をますます充実させていく予定ですので、どうぞご期待下さい。

写真上:底曳き網をひきあげるところ
写真下:目当ての生き物を素速く選別

〔葛西臨海水族園調査係 小野瀬拓也〕

(2011年12月02日)



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