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招かれざる客[2]オナガガモとカルガモ
 └─井の頭 2011/11/26

 本格的な寒さが来る前に、井の頭池には一足早く冬の渡り鳥たちが集まってきています。オナガガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロなどカモのなかまは、この池の常連です。日々彼らが増えていくさまは井の頭池の初冬の風物詩です。このほかにもカルガモやカイツブリは一年を通じてこの池で見ることができます。

 しかし、オナガガモやカルガモは私たちにとって招かれざる客になることがあります。

 井の頭自然文化園分園には、井の頭池の一部を仕切ってオオハクチョウ、コクチョウ、シジュウカラガン、サカツラガンなど大型のガンカモ類を中心に展示しているエリアがあります。そこには、とくに外部との仕切りがないため、野生の鳥たちが自由に出入りすることができます。飼育鳥類の餌は、キャベツ半分を地上に刺し、首の長いガンカモのなかましかついばめない餌箱にカモ用ペレットとコマツナを入れていますが、都市環境に慣れていて人が与える餌を喜んで食べる野生のオナガガモやカルガモにとっても、絶好の餌場です。

 朝、コクチョウ、シジュウカラガン、サカツラガンなど大型の飼育している鳥たちが一通り食べ終わると、すでに展示場の池の中に入って待っている野生のオナガガモやカルガモが餌箱の中に首を突っ込んで食べ始めます。さらに、彼らが食べ落とした餌を狙っている野生のコイやミシシッピアカミミガメが周りにいて、ときには餌を食べた大きなコイにパンチを食らわせるカルガモもいます。

 彼らは満腹になった後も大胆で、陸と池をつなぐ木製のスロープ上で、まるでここの住人のごとく居眠りを決め込むものもいます。観覧側から見て最も左側の仕切りの中にサカツラガン、マガモとともにオナガガモの飼育個体もいますが、明らかに野生個体の方が大胆で太っているようです。

 なぜオナガガモとカルガモだけがこの展示場の池に入ってくるのでしょうか。

 ハシビロガモは、「水面採食」といって水面に浮いているものを平たい嘴で濾して食べる鳥なので、展示場の餌に適応せずメリットがありません。

 キンクロハジロは、おもに水底にいる底生生物を食べており、しかも飛び立つのに一定の助走距離が必要なので、展示場の池に降り立つことはできても飛び立つことができないので、やってこないのでしょう。

 一方、オナガガモやカルガモは、水面から短い助走で飛び上がることができるため、展示場内と井の頭池あるいは展示場の池と池の間を自由に移動しています。また、私たちの与える餌が彼らの主食としても十分なものであることが、彼らが展示場の池を独占できる理由と考えられます。

写真上:水上の餌箱をあさるオナガガモ
写真下:餌に満足してスロープで休むカルガモ

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 池田正人〕

(2011年11月26日)



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