秋になると、開けた場所にカマキリが出てくることが多くあります。そんなカマキリを捕まえて腹部の先端を水につけると、黒くて細長い「ハリガネムシ」が出てくることがあり、多摩動物公園昆虫園本館でそれらを展示しています。水槽の中にひもが入っているだけのように見えますが、よく見るとゆっくり動いています。
ハリガネムシは、名前に「ムシ」とついていますが昆虫ではなく、まったく別の「類線形動物」というグループに含まれます。カマキリなどの昆虫の体内に寄生して成長します。
カマキリから栄養を十分に摂ったあとは、何らかの方法でカマキリを水辺へ誘導し、水中へ脱出します。水中に移動したハリガネムシは餌を食べることなく冬を越し、春に産卵して一生を終えます。
卵からかえった幼虫は、ユスリカやカゲロウなどの水生昆虫に飲み込まれたあと、体表面に丈夫な膜を形成し、いったん成長を止めます。その後ユスリカなどが羽化して水中から出たあと、運よくカマキリに捕食されるとそのままカマキリの体内へ取り込まれ、成長を開始します。
カマキリの中でも、とくにハラビロカマキリが寄生されている割合が高いようです。また、カマキリのほかに、コオロギやカマドウマ、カメムシなどに寄生するハリガネムシの種類もあります。
なお、ハリガネムシが出たあとのカマキリは餌を与えても食べることなく、数日のうちに死んでしまいます。
写真:ハラビロカマキリから出たハリガネムシ
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 石島明美〕
(2011年11月18日)
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