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アシナガバチ一家、襲撃される
 └─多摩  2011/09/23

 残暑の厳しい2011年9月8日の朝、多摩動物公園昆虫生態園の温室の外側窓枠に作られた、キアシナガバチの巣で事件は起こりました。巣には多数の働きバチの混乱する姿があり、キアシナガバチより大きいヒメスズメバチに襲われていたのです。

 1匹のスズメバチに対して、アシナガバチは巣に100匹近くいます。しかし、スズメバチがかみつくようにして攻撃すると、アシナガバチはあっさりと飛んでいき、近くの葉っぱに降りてすっかり戦意喪失といったようすです。集団で反撃をするようなこともありません。スズメバチの攻撃を発見してから30分ほどで、アシナガバチはほとんど巣を離れてしまいました。

 アシナガバチがいなくなった巣で、スズメバチは何をするのでしょう。観察していると、スズメバチは巣に残ったアシナガバチのさなぎを引き抜き食べ始めました。じつはこのヒメスズメバチは、アシナガバチの巣を専門に襲い、幼虫やさなぎを引き抜いて体液を吸い、自分の巣の幼虫に与えるのです。

 翌日の朝、巣を確認したところ、すべてのさなぎが抜き取られていました。襲撃から3日後までは、巣に成虫のアシナガバチの姿が見られましたが、その後は1匹も確認できなくなりました。アシナガバチはもうこの巣を捨ててしまったようです。

 アシナガバチにとって、強盗ヒメスズメバチは脅威となっているようです。ひとつのヒメスズメバチの巣が成熟するために、なんと150~200ものアシナガバチの巣が必要という見積りもあります。もし急に空き家となったアシナガバチの巣を見つけたら、それは襲撃事件の現場跡かもしれません。

※スズメバチ、アシナガバチともに、不用意に近づくと人を襲うことがあります。観察する際は十分にお気を付けください。

写真上:ヒメスズメバチに襲撃されたキアシナガバチの巣
写真下:襲撃30分後、巣からさなぎを引き抜くヒメスズメバチ

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 田中陽介〕

(2011年09月23日)



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