「えー、これニセモノでしょ!?」──オオゴマダラというチョウのさなぎの展示を見たお客さんからよく聞く言葉です。オオゴマダラのさなぎはピカピカと金色に輝いていて、またプラスチックのような質感であるためか、生きているさなぎだと思ってもらえないことが多いようです。
そこで、多摩動物公園昆虫生態園では、さなぎが本物であることを示すため、幼虫からさなぎになるまでを展示することにしました。オオゴマダラが葉の裏などでさなぎになる習性を利用した展示です。大きく育った幼虫と一緒に餌の植物を入れ、そこに人工の葉をつけた木の枝を置きました。こうすると、幼虫は木の枝をのぼって人工の葉の裏でさなぎになります。タイミングがよければ、さなぎになる直前の幼虫が葉の裏にぶら下がっている状態や、幼虫の皮が裂けて中からさなぎが出てくる瞬間も見ることができます。
じつは以前にも同様の展示をしたことがありましたが、今回はバージョンアップして、オオゴマダラに加え、リュウキュウアサギマダラも一緒に展示しています。この2種類は同じマダラチョウのなかまで、幼虫やさなぎの形は似ているところもあるのですが、模様や色などはかなり違っています。
チョウの幼虫が食べる餌の植物は、チョウの種類によって決まっていることが多く、オオゴマダラとリュウキュウアサギマダラは違う種類の植物を食べます。展示では、それぞれの餌の植物を隣り合わせに置いていますが、どちらの幼虫も餌を間違えることはないようです。
昆虫生態園にお越しの際は、葉の裏で鈴なりになった「ホンモノの」さなぎ2種類と、その下で餌を食べる幼虫2種類を、それぞれ比較してみてはいかがでしょうか。
写真上:人工の葉の裏にぶら下がるさなぎと下は餌の植物を食べる幼虫
写真中:幼虫(左)リュウキュウアサギマダラ(右)オオゴマダラ
写真下:(上)リュウキュウアサギマダラ(下)オオゴマダラ
どちらも(左)さなぎ(右)さなぎになる直前
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 草野啓一・田中陽介〕
(2011年09月16日)
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