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南米チリの海産食材あれこれ
 └─葛西  2011/09/02

 2011年7月末から8月中旬にかけて、葛西臨海水族園の職員が南米のチリ共和国に生物採集のため出張しました。

 南半球は真夏の日本とは季節が逆の真冬なので、厚着をしながらの作業が続きました。現地の採集ポイントの岩場には、イガイのなかまが帯状にビッシリと隙間なく密集し、生物量の豊かさを感じました。
 今回は出張中に目にした少し変わった食材や料理について紹介したいと思います。

 現地の漁港の近くには生鮮市場があり、さまざまな魚介類や野菜類が売られていました。出店の軒先には干したイガイやホヤのなかまが数珠つなぎになってスダレのように何本も吊るされていたり、日本でもチリ産のウニとして売られているエリソというウニが、これでもかというくらいのボリュームのビン詰めとなって店頭に並んだりしていました。私たち日本人がお店に近づくと「UNI!UNI!」と何度も声をかけられます。

 水族園で展示しているピコロコはチリ沿岸に広く分布するフジツボのなかまで、市場では大人のこぶし大のものが食材として売られていました。過去の出張者の話からピコロコ料理のことを聞いていたため、私たちも注文してみることにしました。ピコロコは貝のなかまのように見えるかもしれませんが、じつはエビやカニと同じ甲殻類です。かたい殻の中にくらすピコロコはほかの甲殻類と同じように成長にともない脱皮をするので、ときどき水槽の中で脱皮殻が漂っているのを見ることができます。

 注文後、しばらくするとゆでたピコロコのムキ身がいくつか並んだお皿が出てきました。フタのような殻の口のすきまから、餌のプランクトンをかき集めて食べる蔓脚がのぞいていました。味はカニのようで、味覚の上でもやはり甲殻類のなかまであることを実感しました。

 また現地周辺は、日本へ輸出されるサケ類の養殖が盛んで、市場では鮮魚やスモーク等の加工品が並べられていました。
 地球の反対にある遠くの国と日本の食卓との関わりや魚食文化の共通点について興味深く感じました。

写真上・中:チリの市場の店先
写真下:ピコロコ料理

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2011年09月02日)



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