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透明な血液をもつ南極の魚「コオリウオ」公開!
 └─葛西  2011/08/24

 厳しい残暑にふさわしい魚が葛西臨海水族園に到着! その名もオセレイテッドアイスフィッシュ。和名はジャノメコオリウオ。南極海でくらす魚です。

 水族館での採集・展示の例はなく、生きた状態で展示するのは世界初。本日、2011年8月24日から公開しました。コオリウオのほか、南極から到着した魚類については、こちらのお知らせもごらんください。

 この魚の特徴はなんといっても、水のように透明な血液です。ふつう、動物の血液内には赤血球という細胞があり、赤血球の中にはヘモグロビンというタンパク質があります。体中に酸素を運ぶ役割を担うこのヘモグロビンは、赤い色素を含むため、赤い色をしています。ところが、コオリウオは赤血球をほとんどもたず、しかもそのわずかな赤血球にはヘモグロビンがないので血液が透明なのです。

 南極海には赤い血の魚もいます。生きていくのに必要なはずのヘモグロビンを、どうしてコオリウオがなくしてしまったのか、今でもよくわかっていません。わかっているのは、コオリウオが大きな心臓を使って全身に大量の血液を送り、その液体成分(血漿)に酸素を溶かして運んでいること、また、えらだけでなく体の表面から酸素を取り入れているということです。凍るほど冷たくなる南極の海では、水温の高い他の海にくらべて、たくさんの酸素が海水中に溶け込んでいることも助けになっているようです。

 コオリウオを解剖してみると、筋肉から肝臓、そしてふつうは真っ赤な色をしているえらまで、見事に白色をしていて、血液が赤くないことがよくわかります。

 南極のきびしい環境でくらしていく魚たちがもっているさまざまな仕組みにはいつも驚かされます。しかし、なかでもこのような透明な血液をもつ魚はコオリウオのなかまだけ。まさに謎に満ちた南極特別仕様の魚です。

 今回葛西臨海水族園到着したオセレイテッドアイスフィッシュは、南極海でオキアミ漁をおこなっている日本水産株式会社の福栄丸がオキアミとともにとりました。船内の冷凍工場に設置した水槽で約2か月間、飼育しながら南米チリの南端の町プンタアレナスまで持ち帰ってもらいました。そこでわれわれ水族園チームが受け取り、日本まで約3日間、水温が3℃以上にならないよう、クーラーボックスに氷と一緒にして輸送しました。

 オセレイテッドアイスフィッシュは2011年8月24日(水)から、「北極・南極の海」コーナーで展示開始。全長約40センチメートルの精かんな顔つきの魚です。もちろん世界で初めての展示です。お見逃しなく。

写真
上:オセレイテッドアイスフィッシュ(ジャノメコオリウオ)
下:赤血球をほとんどもたないため、えらや心臓、消化管等、内臓の多くは白色をしている

〔葛西臨海水族園調査係 多田諭〕

(2011年08月24日)

An Ocellated Icefish (Chionodraco rastrospinosus) is now on display at Tokyo Sea Life Park, an aquarium in Edogawa, Tokyo. The species lives in the Antarctic region, but is extremely rare, and has never been collected or exhibited at any aquarium in the world. It is the world''s first living icefish display at an aquarium!

They are unique in that their blood is translucent like clear water. Almost all the vertebrates have hemoglobins in the blood, and the hemoglobins usually contain red pigments, but icefish lack hemoglobins.

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