ニュース
違いがわかる飼育係、スマとカツオの卵
 └─葛西  2011/08/19

 葛西臨海水族園の飼育係は、それぞれに担当する展示エリアや生き物が決まっています。そしてその担当はときどきかわることがあります。

 私は先日まで世界の海エリアを担当していましたが、2011年7月からマグロ類の飼育を担当することになりました。さて、そんなマグロの担当で私が早速ぶつかった壁、それは「卵の見分け」です。

 水族園の「大水槽」では、クロマグロ、スマ、カツオ、ハガツオの4種の魚を展示していますが、それらが産む直径1ミリメートルほどの卵を集めて、魚たちの状態を見たり、また卵から育てることに挑戦したりもします。

 約2200トンもの海水が入る「大水槽」で小さな卵を集めるのは大変なように思えます。しかし、マグロやカツオのなかまは、1粒ずつバラバラになって海水に浮く卵を産むので、水面にネットをしかけることで卵を集めることができます。

 そしてマグロ担当の日課のひとつに、どの種が産んだ卵かを顕微鏡を使って調べる作業があります。最近産卵が確認されているのはスマ、カツオ、ハガツオの3種です。ハガツオの卵はほかの2種のものより大きく、油球と呼ばれるツブが複数あるので、すぐに見分けられるようになりました。

 しかしカツオとスマの卵はとても似ています。「微妙~!」と叫ぶ迷える子羊(私)に先輩が教えてくれたのは、「半日待つ」ことでした。なるほど、時間が経った卵の中には小さい魚の形ができていて、体のもようが違います。さらに孵化した稚魚を見ると、違いがよりはっきりわかりました。

 あんなに大きな魚たちが1ミリほどの卵から生まれてくることも驚きですが、生まれる前からそれぞれの特徴が目に見えてわかるのは凄いと思いませんか。

 みなさんにも卵を観察できる可能性がある場所をご紹介します。「アクアシアター」の階段を上がって、水槽の一番上まで来てください。水槽の中をよく見ると、泡に混ざって小さい透明な卵が漂っているのを、肉眼で見られるかもしれません。最近は午後2時過ぎにスマが産卵しているので、午後の遅めの時間が卵観察にはオススメです。また、ガイドツアーに参加すると、産卵のあった日には小瓶に入った卵を間近で観察できますので、ぜひご参加ください。

写真上:卵を集めるためのネット
写真下:孵化間近の卵と孵化仔魚(スケールは1ミリメートル)
    ※現在、クロマグロは産卵していません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕

(2011年08月19日)



ページトップへ