多摩動物公園のチンパンジー放飼場を見ていると、草や枝が集められてドーナッツ状になっていることがあります。一体これはなんでしょうか? じつはこれはチンパンジーが作ったベッドなのです。
野生のチンパンジーは、休むとき木に登り、枝を折り曲げてベッドを作ります。動物園でも材料になるものを与えると、体の周りに集めてドーナッツ状のベッドを作ります。枝葉や草、ワラ、消防ホース、麻袋、段ボールなどで、ときには枯れ葉や食べ残しのオレンジの皮など、そんなものを!? というものが材料になることもあります。
ベッド作りはおとなもこどももオスもメスもおこないます。3歳のチンパンジーのマックスも、小さな体の周りに一生懸命枝葉を集めて立派なベッドを作ります。
作り方には、チンパンジーそれぞれの特徴が出ます。アンナ(6歳)やピーチ(20歳)は高い所まで材料を運んで作るのが得意です。ベリー(11歳)やミカン(5歳)は素早くきれいなベッドを作ります。デッキー(推定33歳)は枝葉で作るのが好きです。チコ(17歳)やベロ(42歳)はとくにベッド作りが上手で、いろいろな材料を組み合わせて作ります。以前ベロは、ワラ、消防ホース、段ボール、それからなんと10枚もの麻袋を使って大きなベッドを作ったことがあります。後で私が寝てみると、フカフカとして温かく、このまま寝てしまいたいと思うほどの寝心地の良さでした。
今の時期は、ツル性植物のクズで作ったベッドがよく見られます。園内にたくさん生えているのを取ってきてはチンパンジーたちに与えていますが、夏場に伸びてくるクズは、柔らかいのに丈夫で扱いやすく、最適な材料のようです。
いつ作るかは彼ら次第ですが、いろいろな材料を抱えているチンパンジーを見かけたら注意して見てください。巧みな手さばきでベッドを作るところが見られるかもしれません。動物園でのベッド作りに、きっと彼らの野性を感じていただけると思います。
写真上:クズと麻袋を使ったベッド
写真中:高い所でベッド作るピーチ(後方)とマックス(手前)
写真下:チコのベッド
〔多摩動物公園北園飼育展示係 東川上純〕
(2011年08月05日)
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