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累代飼育をめざしてタマムシの採集と観察
 └─多摩  2011/07/22

 2011年7月10日正午ごろ、多摩動物公園昆虫園本館の脇に停めてあった軽トラックの周りを、タマムシが今にも止まりそうにゆっくりと飛んでいました。あわてて捕虫網を持って向かいましたが、あっという間に上昇し、コナラの梢の向こうへと飛んで行きました。

 この悔しさを先輩職員に話したところ、毎年その近くのエノキの樹にタマムシが飛んでくると言います。「ほら」と先輩職員が指を差した先にあるエノキの梢を見ると、いままで気がつきませんでしたがタマムシが群れ飛んでいます。

 午後になると、飛んでいるタマムシの数は10匹以上になっていました。そこで柄の長さ10メートルの特製捕虫網を持ち出して、炎天下、夢中で網をふるいました。午後2時から始めて、体力の限界を感じ始めた30分後には、5頭のタマムシを手にしていました。

 当日はうれしさのあまり気がつきませんでしたが、翌日冷静になって雌雄判別をすると、すべてオスでした。そこで再び梢を飛び回るタマムシを4頭調べたところ、こちらもすべてオスでした。

 それにしても真昼間の直射日光下で、どうしてタマムシは元気に活動できるのでしょう。タマムシの活動時間帯が気になり、翌日観察したところ、午前11時から飛び始め、午後1時から3時ごろをピークに5時ごろまで樹の周りを飛んでいました。光り輝く体色が日光を反射して体温上昇を抑えているのでしょうか。

 そこで、直射日光下に1時間置いた標本の表面温度を非接触赤外線温度計で測定してみましたが、タマムシ(玉虫色)は38.6℃、カヤキリ(緑色のバッタ)は36.4℃、アオオサムシ(緑銅色)は35.0℃、カブトムシ(黒色)は46.6℃と、タマムシがそれほど低いわけではありませんでした。

 累代飼育を目指してメスを採集するため、13日の午前11時に園内の伐採木置き場へと向かいました。タマムシの幼虫は広葉樹の材を食べるので、きっと産卵にやって来るはずです。まもなく「バウーン」という羽音とともに、上空からタマムシが舞い降りてきました。しばらく低い位置を飛び、横積みされたサクラの伐採木に止まると、お尻から産卵管を出してそれを引きずるように幹にあて、歩き始めました。その後30分間で3頭のタマムシがやってきて、すべてがメスでした。

 このようにオスとメスとでは活動場所が違っているわけですが、どこで交尾しているのかが気になりましたが、この記事に載せるためにエノキの梢を撮影していたところ、交尾しているタマムシを写真に収めることができ、宿題が解けました。

写真上:梢を飛び回るタマムシのオス
写真中:交尾
写真下:産卵

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 田畑邦衛〕

(2011年07月22日)



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