両生爬虫類というと恐ろしい捕食者というイメージをもっている方が多いかもしれません。たしかに、ほかの動物を食べて生きている両生爬虫類は珍しくありませんが、彼らはまた、餌としてねらわれる弱い存在でもあります。
上野動物園両生爬虫類館で開催中の特設展「両生爬虫類鑑 まもる」では、厳しい野生環境で両生爬虫類が身を守るためのくふうについて紹介しています。
今回はその中でも、周囲の環境に姿を似せて身を守る動物を紹介しましょう。これは隠蔽擬態(いんぺいぎたい)と呼ばれるもので、捕食者からの発見そのものを避ける方法です。本特設展では2種のカエルと2種のヤモリの巧妙な隠蔽擬態をごらんいただけます。
東南アジアにすむミツヅノコノハガエルは、枯れ葉が積もった森林の地上でくらすカエルです。「ミツヅノ」というのは「三つの角」という意味で、まぶたの先端と鼻先がとがっていて角のように見えることに由来します。体の色は落ち葉のような明るい褐色で、まぶたの下側とのどの部分は黒っぽい色をしています。この色は重なり合った落ち葉の色合いとそっくりで、林床にまぎれてじっとしていると、なかなか見つけることができません。
コケガエルは、同じく東南アジアの渓流にすむカエルです。体は苔のように緑、茶、黒などの色が混ざったまだらもようで、しかも表面にデコボコがあるので、岩などに張り付いているとまさに苔にしか見えません。
残りのふたつはマダガスカルにすむヘラオヤモリのなかまです。尾がヘラのように平たいので、この名がつけられました。
ヤマビタイヘラオヤモリはザラザラとした皮膚をもち、樹皮に擬態しているヤモリです。たいていは樹の幹に頭を下に向けて張り付き、四肢を体にぴったりと密着させています。このとき、後肢を平たい尾の下に隠すだけでなく、体の両側にあるフリンジと呼ばれるひだで幹との隙間を埋めてしまいます。こうなると、体のシルエットが隠れてしまうので、ぱっと見はただの幹にしか見えなくなってしまいます。ただし、ケージのガラスに張り付いているときはバレバレですが……。
もうひとつのエダハヘラオヤモリは、枯れ枝や枯れ葉に擬態しています。こちらはヤマビタイヘラオヤモリのように張り付くのではなく、細い枝につかまってじっとしています。なんといっても特徴的なのは尾で、枯れ葉に本当にそっくりです。飼育している私でさえ、ケージ内に落ちていた尾(日本のヤモリ同様、自分で尾を切ることがあります)を、本物の枯れ葉だと思ってしばらく気づかなかったほどです。
展示では、各動物の写真と飼育数を隠しています(近くに答も掲示しています)。来園者の方の反応をこっそりと観察していると、1匹目の発見までに時間がかかるようで、答えを見ずにすべてを見つけられる人はごくわずか。捕食者になったつもりで、ぜひチャレンジしてみてください。
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特設展開催のおしらせ
写真上:ミツヅノコノハガエル
写真中上:コケガエル
写真中下:ヤマビタイヘラオヤモリ
写真下:エダハヘラオヤモリ
〔上野動物園は虫類館飼育展示係 坂田修一〕
(2011年05月27日)