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本当に生きているの? 動かないミドリフサアンコウ
 └─葛西  2011/05/13

 葛西臨海水族園「深海エリア」には、ミドリフサアンコウという魚がいます。 ミドリフサアンコウは、アンコウ目フサアンコウ科に属する、いわゆるアンコウのなかまです。体を底面にじっと横たえ、ほとんど動かない魚なので観察も簡単。いくつか特徴を見てみましょう。

 目と口はどちらも大きく、体の上側を向いています。これはじっと餌がくるのを待ち伏せて、一撃で捕まえてしまうためです。大きな口には、小さく鋭い歯がたくさん生えており、餌を逃さないようになっています。

 さらに口のすぐ上には、アンコウのなかまによく見られる誘引突起があります。小さな生き物をおびき寄せる釣竿のようなものですが、ミドリフサアンコウのものは小さく、ふだんは寝かせてあるので見えづらくなっています。しかし、飼育担当者が餌を近づけると、突起を立て小刻みに動かすことがあり、海の中でも、同じような動きで餌をおびき寄せているのでしょう。

 「本当に生きているの?」と思うくらい、ミドリフサアンコウは動きません。待ち伏せして餌を獲る習性があることから、ほかの生き物に自分の存在を気づかせないためですが、それでも動きを止められない場所があります。

 それは、えらへ水を出し入れするための鰓孔(さいこう)という孔の動きです。ミドリフサンコウも呼吸をする必要があり、この孔をゆっくり開け閉めします。唯一動きの止められない鰓孔は、口から遠い後ろのほうにあり、これも獲物に自分の動きを極力見せないためのくふうなのかもしれません。

 最後に餌を一瞬で食べるシーンをごらんください。狩りのようすがお分かりいただけると思います。
「新たな視点で見てみると(5)スローモーションで見るアンコウの摂餌Part2」

写真上:餌をおびき寄せるための誘引突起
写真下:体の後ろのほうにある䚡孔

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2011年05月13日)



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