多摩動物公園昆虫生態園の南西諸島のコーナーでは、沖縄に生息する生き物たちを展示しています。沖縄といえば南国です。昆虫園で展示しているオオゴマダラやオキナワナナフシ、タイワンクツワムシ、オオゴキブリなどのように大型の昆虫が多いことで有名ですが、2011年4月28日から、真逆の存在である日本最小のカマキリ「ヒナカマキリ」を展示しました。
成虫の体長は2センチメートルほどで、生まれたばかりの幼虫にいたってはなんと3ミリメートルという、日本のカマキリの中では群を抜いて小さい種類です。成虫になってもオスメスともに翅が生えないという特徴があり、幼虫と成虫の区別が非常につけづらくなっています。
ヒナカマキリは本州から沖縄、海外では台湾や朝鮮半島など、さまざまな地域に生息している種ですが、多摩動物公園の周辺に多いオオカマキリやコカマキリたちとは生態が異なるため、なかなか目にする機会はありません。彼らは草原ではなく森林でくらし、植物の枝や葉の上にいるよりも、地面にいることがほとんどです。そして、カマキリらしい待ち伏せ式の狩りをせず、走りまわって獲物を狩ることを得意としています。関東の森でまとまって見つかることはまれですが、沖縄の森には比較的多く生息しており、夜になると多くの個体が森の中を走りまわっているようすを観察できます。
昆虫園にはほかにも、日本最大のオオカマキリ、海外種のハナカマキリを展示しています(どちらも本館2階)。オオカマキリは体やカマが大きく、草陰で待ち伏せして狩りをします。ハナカマキリは待ち伏せ式の狩りですが自分の体を花に似せて待ち伏せします。ヒナカマキリの小さい体に走り回る狩りも合わせ、これら三者三様の形とくらしぶりに注目しながら、南西諸島の生き物の多様さをごらんになっていただきたいと思います。
写真上:幼虫
写真下:成虫(メス)
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕
(2011年04月29日)
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