ニュース
熊猫的新聞(パンダニュース)──1
 2頭が飼育されている雅安から中国を発つまで
 └─上野  2011/03/04

 2011年2月21日深夜、上野動物園に2頭のジャイアントパンダが無事にやってきました。

 ジャイアントパンダの来園にあたり、2011年1月3日から半月ほど、飼育係と獣医師が四川省にある雅安碧峰峡基地へ飼育研修を受けに行きました。基地は山の上にあり、時折降り積もる雪の中で、オスの比力(中国名ビーリー)とメスの仙女(中国名シィエンニュ)が飼育されていました。

 初対面の際、仙女は餌がもらえると思ったのか、そばまで寄って来たので、物怖じしない性格だなと感じました。一方、比力は「ん、誰?」とでも言うように、少し距離を置く態度でした。この2頭は、新しい環境への適応能力が比較的高いといわれており、研修の後半では採血もできるまでになりました。

 2月18日、日本への輸送のために、再び中国へ入りました。2頭と再会したとき、比力はこちらを覚えていたのか初めて会ったときほどの警戒心は見せず、仙女のほうは相変わらず誰がいても近づいてきました。2頭とも健康状態良好のようでした。

 輸送当日、「いざ日本へ!」と準備のため飼育舎へ到着すると、呼びかけても反応せず丸くなって動かない比力がいました。これは体調不良ではなく、ジャイアントパンダ特有の粘膜便を排泄するときのポーズです。こうなるとテコでも動きません。参ったなと思ったのですが、中国側の飼育担当者は問題ないよと言います。どうやら朝早くからこのポーズでうずくまっているので、そろそろ粘膜便が出るころらしかったのです。たしかに、少しして100グラムほどの粘膜便を排泄し、もとの動きに戻りました。

 夕方、2頭を輸送用のトラックに載せ、パトカーの先導で約2時間かけて成都空港近くのホテルに到着しました。

 翌日未明、2頭のようすを確認しに行ったところ、輸送箱の中で竹をよく食べていたので少し安心しました。早朝、空港の貨物エリアで積み込まれると、しばしお別れです。経由地の上海空港で、積み替えをするときに健康チェックをさせてもらうまで、2頭のようすはわかりません。無事を祈るのみでした。

 正午前、上海空港に無事到着しました。さっそく空港の貨物エリアへ向かいます。比力は長旅で少し疲れたように見えましたが、仙女はまったく動じず、食べるものを食べたら寝てしまいました。仙女は肝っ玉かあさんになる素質をもっているようです。出国のため最後の清掃をおこなったあと、貨物室へ載せたのを確認して、我々も機内へ入りました。

 機内では、パンダも一緒に乗っていることを知らせる機長の粋な計らいのアナウンスが流れました。我々の「いよいよ日本だ!」という気持ちとほんの少しの不安を乗せて、飛行機は中国を発ちました。

・東京ズーネットBBの動画から
  ・雅安でのオス
  ・雅安でのメス
  ・中国からの輸送のようす

写真上から:
・会って間もないころの仙女(メス)
・会って間もないころの比力(オス)
・中国側の輸送トラック
・輸送中の比力
・中国で最後の清掃
・上海空港での積み込み作業とパンダ柄の飛行機

〔上野動物園東園飼育展示係 藤岡紘〕

(2011年03月04日)



ページトップへ