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ツキノワグマ、今年は2頭が冬眠
 └─上野  2011/01/14

 上野動物園では、2006年から毎冬ニホンツキノワグマを冬眠させ、そのようすを展示しています。2010年度はクー(メス、5歳)とタロコ(メス、4歳)が冬眠中です。

 しかし、オスのソウ(5歳)は冬眠させず、放飼場に出しています。メスだけを冬眠させているのには理由があります。じつは昨年(2010年)夏、メスは2頭ともソウと交尾しました。ツキノワグマの習性として、冬眠中の1月から2月に出産し、子育てします。そこで、出産を想定して冬眠させているのです。

 クマ舎には冬眠のための「準備室」があり、その隣に「冬眠ブース」があります。東北地方などの環境を再現した準備室はマイナス5℃まで下げることができます。ここで冬眠へと誘導し、クマが「その気」になれば、野生の冬眠穴を模した、真っ暗な冬眠ブースに入れるようになっているのです。冬眠ブースの内部は、モニターカメラを通じて観察することができます。

 昨年はタロコが冬眠ブースで冬眠に入り、期待も大きかったものの、残念ながら出産はしませんでした。

 今年はクーが性成熟に達し、交尾回数も多く、妊娠の可能性が高そうだったので、モニターで観察できるよう、クーが冬眠ブースに入るように設定しました。そして2010年12月17日には絶食、冬眠に入りました。準備室内で寝てしまうこともありましたが、今は一日の大半を冬眠ブースで寝て過ごしています。

 一方のタロコは、室温の調整をおこなわない非公開の寝室で冬眠させることにしました。2009年にソウはこの条件で冬眠しましたが、クーは落ち着かなかったのか冬眠にいたりませんでした。そこで今回は、タロコの入ったこの寝室に目隠し用の板を取りつけ、窓には寒冷紗をはり、4日間かけて餌をへらして、2011年1月8日には絶食状態に移行させ、冬眠させました。冬眠に入ったばかりですし、モニター装置もないので、タロコの状態は詳しくはわかりません。  クーは例年よりも眠りが浅く、水をよく飲んでいます。妊娠しているとすれば、出産の兆候なのかもしれません。

 モニターに映る冬眠中のクーのようすと、寒さに負けず放飼場に出ているソウの姿を、上野動物園にぜひ見に来てください。

・ニュース「今年もぐっすり、ツキノワグマ」(2010年01月14日)

〔上野動物園東園飼育展示係 野島大貴〕

(2011年01月14日)



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