葛西臨海水族園の「東京の海」特設展示コーナーで、マダコの展示を始めました。ここでは、マダコだけ小さい箱型の水槽に入れて飼育しています。理由は、マダコの脱走を防止するためと、同じ水槽で飼育しているイセエビをマダコが食べないようにするためです。
水槽をのぞいてみると、マダコもこちらを見ています。手を振って見せたり、顔を近づけたりすると、マダコも反応して腕をくねくね動かします。
タコといえば、腕が8本あり吸盤がついているのが特徴です。ぺたぺたくっつく吸盤は中に隙間があって、ここの圧力を減らすことで吸着します。ガラス窓にくっつける軟らかいビニール製の吸盤と同じ原理です。
ところで、みなさんはタコの吸盤が脱皮することをご存知でしょうか? タコの吸盤は、直接いろいろなものに吸着するため、接着面の消耗が激しく、常に接着面を新鮮に保つ必要があるので、頻繁に吸盤の脱皮をするのです。
私はどうしてもタコの吸盤の脱皮した皮をよく見たくなり、飼育係にたのんで、水槽内に漂っている脱皮した吸盤の皮を集めてもらうことにしました。飼育係が水槽に小さい網を入れたそのとき、タコの逆襲が始まりました。網に絡みつき、飼育係から奪おうとします。ものすごく強い力です。ついには、飼育係の腕にも絡んできました。これは、餌を与えて気をそらさないと、網を放さないのではと思いましたが、格闘の末、なんとか取り返すことができました。そして、無事に脱皮した皮を集めることができました。
脱皮した皮は、半透明で、非常に薄くなっています。もろいので、すぐに形が崩れてしまうものもありますが、よく見るとちゃんと丸い吸盤の形をしています。この脱皮した吸盤の皮を見てみたい方は、ぜひガイドツアーにご参加ください。本物をお見せします。ぜひパワフルなマダコに会いに来てください。
写真上:水槽をのぞいた人を見ているマダコ
写真中:マダコの吸盤
写真下:脱皮した吸盤の皮
〔葛西臨海水族園動物解説員 武藤裕子〕
(2011年01月14日)
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