ウミホタルといえば、東京湾横断道路のサービスエリアの愛称として親しまれていますが、発光生物として昔からとても有名な生き物です。
体長はわずか3ミリメートルほどのミジンコに近いなかまで、エビやカニと同じ甲殻類です。日本の沿岸に広く分布し、波の穏やかな内湾の砂地にすんでいます。
葛西臨海水族園では、その発光のようすを実験的に再現する展示を開園以来ずっと続けてきました。
これまでにもいろいろなトラブルがあり、発光を見るのを楽しみにしていた来園者の方々をがっかりさせたことが幾度もありました。改良と再発防止の努力を重ねてきましたが、また大きな問題が現れたのです。
この春(2010年)のこと、ほとんど「光らない」状況が続き困っていました。原因として餌不足や餌の質の問題などが疑われましたが、いずれも違うようでした。
また、ウミホタルに比べると体がやや細長く、顕微鏡でみるとはっきり違いがわかる「ウミホタルモドキ」というややこしい名前の、発光しない生き物がいます。これは以前から飼育水槽に混ざっているものの、少数派で、今回のトラブルとの関連はないようでした。
そこで、光らないウミホタルを顕微鏡でよく観察すると、発光に必要な発光液を溜めていないことがわかりました。これでは光らないはずです。
その後さらにじっくりと観察したところ、光らないウミホタルは、光るウミホタルとは別の種のようで、とりあえずここでは「にせウミホタル」と呼ぶことにします。大きさや形、見た目がそっくりで、分別するのが大変なだけでなく、飼育水槽の中では本物のウミホタルよりも繁殖力が強く、次第に「にせウミホタル」のほうが増えてくるのです。
「にせウミホタル」との闘いは始まったばかりです。来園するみなさんにウミホタルの幻想的な発光をきちんとごらんいただけるように「にせウミホタル」を増やさずにウミホタルだけを増やせるようにがんばりたいと思います。
ウミホタルの発光展示は、「東京の海」エリアの「10minライブ(てんみにっつらいぶ)」のコーナーで、1日に2回実演しています。昆虫のホタルとは違う趣きの発光のようすをぜひライブでごらんください。
写真
左:ウミホタル(矢印のオレンジ色の部分が発光液をためているところ)
中:ウミホタルモドキ
右:「にせウミホタル」
〔葛西臨海水族園飼育展示係 荒井寛〕
(2010年11月05日)
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