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カピバラとラマの同居
 └─上野  2010/10/29

 2010年7月13日、埼玉県こども動物自然公園からカピバラのメス「マオ」がやってきました。上野動物園のカピバラ放飼場にはラマとアメリカバクもいっしょに飼育しており、微妙な距離を保ってじょうずに共存していることを以前お伝えしました(以前の記事はこちら)。

 マオは少し気の強いところもありますが、同居予定の動物たちと7月中に柵越しのお見合いをすませました。今まで放飼場の隅で過ごすことが多かったオスのカピバラ「タン」も、7月の終りにはマオのいる小放飼場の前で休息するようになりました。タンとはカピバラ流の挨拶も交わし、これはよい感じだと思われていた矢先、残念ながらタンが体調不良でこの世を去ってしまいました。

 今後カピバラのオスがやって来たときに落ち着いて群れ作りができるよう、同居予定のラマやバクたちにも慣れさせないといけません。まず、9月に1頭だけで初めて広い放飼場へ出しました。マオは小放飼場からずっと広い放飼場を観察していただけあって、すぐに青草のある場所を見つけて食べ始め、プールでも泳いでいました。足のつかないプールに入ったことがほとんどなかったマオでしたが、そこはさすがカピバラ、すいすい潜水を楽しんでいたようでした。しかしプールの使い方がわからないようで、マオはせっかくある階段を使わず、プールから飛び上がって出ていました。

 マオが広い放飼場に慣れてきたころ、ラマやバクたちと同居させてみました。同居2日目、ちょっと気の強いマオはプールをめぐってアメリカバクの「サム」とケンカをして左頬に噛み付いてしまいました。バクの皮膚は厚いので大事にはいたらず、傷は縫合手術の後きれいに治りました。

 ラマ1頭とバク2頭、計3頭もの自分より大きな動物といきなりいっしょになったため、ちょっとしたことでも身の危険を感じ、大胆な行動に出てしまったのかもしれません。

 そこで、穏やかな性格の動物と同居させ、自分より大きな動物に慣れさせてから徐々に同居動物を増やしていこうということになりました。そこで白羽の矢が立ったのがラマのおばあちゃん「キュー」です。この放飼場では最古参の動物で、性格がとても穏やかです。マオを同居させたところ、初めこそ気にしたようでしたが、危険がないことがわかると、お互いあまり干渉せず、おのおのやりたいことをやっていました。同居させるのは朝の10時ころまでの短い時間ですが、2頭でのほほんと青草を食んでいます。

 以前のようにラマ・バク・カピバラと3種がそろうまで、もう少々時間がかかりそうですが気長に待ってやってください。

写真:カピバラのマオ(手前)とラマのキュー(後方)

〔上野動物園東園飼育展示係 藤岡紘〕

(2010年10月29日)



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