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アジアゾウ「アーシャー」がおめでた?
 └─上野  2010/09/17

 愛知県の豊橋市総合動植物園からうれしいお知らせが届きました。2009年10月に上野動物園からお嫁入りしたメスのアジアゾウ「アーシャー」(推定33歳)が妊娠している可能性が高いという発表があったのです。

 アーシャーのお相手はオスのダーナ(推定39歳)で、当時1頭でくらしていました。アーシャーは新しい環境にすぐに慣れ、ダーナとの相性も非常に良いという連絡を受け、私たちもとりあえずひと安心していたところでしたが、妊娠の可能性というお知らせがこんなに早く届くとは予想外のことでした。

 ところでみなさんはゾウの妊娠を判断する方法をごぞんじでしょうか?

 ゾウの妊娠は外見(お腹が初めから大きい)や行動(食欲が減退したり、つわりが生じたりすることがない)で判断することがすごく難しいため、私たちはかれらの妊娠を次のような方法で判断しています。

 ひとつはオスゾウの行動です。通常、オスの交尾行動はメスの発情に合わせておこります。妊娠したメスは発情しなくなるため、オスはメスに興味をもたなくなり、交尾行動が見られなくなります。

 次にホルモン検査による判定です。メスの血液や糞、尿から妊娠を示すホルモンの値を測定して判断します。

 そして最近は、ヒトの妊娠でよくおこなわれるエコー検査を活用し、おなかの中のようすを観察しています。エコー検査ではおなかの中の赤ちゃんを直接確認するだけでなく、羊水など妊娠を示すものが見えたりします。

 アーシャーについても、以上3つの妊娠判定方法をすべて利用しました。残念ながらエコー検査では赤ちゃんを確認できず、羊水らしきものしか見えませんでしたが、オスのダーナの行動やホルモン検査の値は妊娠を示すものでした。ダーナはかつて繁殖経験があり、その時も同じような行動をしていたということです。ホルモン検査も、いつも安定した発情周期を示すアーシャーが、前回の交尾以降は発情を示さなくなっています。

 これらの判断材料をよく検討した結果、アーシャーの「おめでた」の可能性は非常に高いだろうと判断し、発表することにしました。

 ゾウの妊娠期間は22か月なので、順調にいくと出産は来年の秋ごろです。そのころ、かわいい赤ちゃんゾウを子育てするアーシャーの姿が見られれば、と今から楽しみにしています。

写真上:上野動物園にいたころのアーシャー
写真下:子宮内を撮したエコー画像。右上の黒い部分が羊水と思われるところ

〔上野動物園東園飼育展示係 乙津和歌〕

(2010年09月17日)



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