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毒をもつ生物(2)磯のやっかいもの、ガンガゼ
 └─葛西  2010/07/23

 梅雨も明け、いよいよ海に山に出かけるのによい季節になりました。今回は海の、特に磯にいらっしゃる方に注意していただきたい生物の紹介です。

 それは、ウニのなかまですが、素手や素足でさわるととんでもないことになる、ガンガゼのお話です。

 ガンガゼの棘(とげ)は、細くて折れそうで、しかも細かい針がびっしりと生えています。たとえば、ムラサキウニの棘などは、指で触れてもしっかりしていて、無理に押しつけたりしない限り刺さりませんが、ガンガゼの方はちょっと触れただけで刺さり、また、皮膚の中で簡単に折れて残ってしまいます。細かい針が生えているため、抜き取ることも簡単にはできません。

 さらに都合の悪いことに、この棘には毒があるらしく、刺さったところが腫れあがり、しばらく強烈に痛みます。深く刺さってしまった場合は病院に行き、最悪の場合は切開して棘を出してもらう必要があります。筆者も誤って指の先でこの針に触れてしまい、ほんの少し刺しただけだったのですが、皮膚の中に棘の先っぽが残ったらしく、2週間ほど痛みが続きました。

 ガンガゼは本州中部以南の浅い海の岩礁域に広く分布しています。もしも、みなさんがこのような磯のある海に出かけるときは、十分に気をつけて、決してガンガゼには近づかないように注意してください。

 さてしかし、このガンガゼ、水族園のようにガラス越しで観察すると、直径5~9センチの殻を中心にして、30センチを優に超える長さの棘が伸び、とても優雅に見えます。殻の上部には蛍光色の青色の点が5つきれいに並び、まるで青い目がついているようです。

 また、水槽にガンガゼを入れると、石に付着して汚れのように見える藻類をきれいに食べてくれるので、飼育係にとってはとても助かる生き物です。

 葛西臨海水族園では、東京の海エリアの中ほど、37号「伊豆七島の海3」水槽で立派なガンガゼに出会うことができます。ただし、こんなに強烈な棘をもつにもかかわらず、恥ずかしがり屋なのか夜行性で、昼間は物陰に隠れていることが多く、見つけにくいかもしれません。でも、長い棘の全部までは隠しきれないので、目を凝らして探してみてください。

写真上:ガンガゼの長い棘
写真中:殻の上部に見える蛍光青の点
写真下:棘の先の拡大(左)ムラサキウニ(右)ガンガゼ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2010年07月23日)



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