上野動物園のバードハウスには1~2階が吹き抜けのケージがあります。1階の出口近くの吹き抜けケージには、黒い体に映える黄色のくちばしと尾羽をもった鳥、カンムリオオツリスドリのペアがいます。
カンムリオオツリスドリは南アメリカに生息し、その名のとおり、草で編んだ球形の「吊り巣」を木の枝につくります。オスとメスは同じ羽色をしていますが、オスの方が体が大きいので区別がつきます。
2010年4月から飼育担当になったばかりの新人の私が、メスが巣材を運んでいるのに気づいたのは4月13日のことでした。枝についた巣材は一見、ゴミくずに見えるようなものでしたが、さらにその1週間後、同様のゴミくずが他の木にもついており、3か所に増えていました。
最終的に4か所で巣ができはじめ、こちらでつくっていたかと思うと、あちらでつくる、という状態が1か月ほど続きました。
5月16日、それまであまり熱心に取りかかっていなかった4つ目の巣で営巣が再開されましたが、5月25日にはまた熱意を失ったようすでした。この巣もダメか……と思っていたところ、6月7日、巣が大きくなったように感じられ、この日を境に見る見る大きくなっていきました。同時に、ヤシの葉がくちばしで裂かれ、どんどんみすぼらしい姿に変わっていきました。
6月19日、メスが吊り巣の中に入るのを初めて目撃し、同日夕方には交尾も確認。さらに2日後、運ぶ巣材がヤシの葉から枯葉に変わりました。枯葉は吊り巣の中に運び込まれていたので、床材として使っていると思われます。
現在、メスは1日のほとんどの時間を巣の中ですごしています。巣の中をのぞくことができないので予想になりますが、すでに産卵しているかもしれません。なお、巣作りはすべてメスがおこなっていました。オスはというと、巣の近くで見守る(?)のみです。
つくりかけの小さな巣、完成した巣、それにぼろぼろになったヤシの葉──カンムリオオツリスドリの営巣の「跡」を探しに、ぜひバードハウスにおこしください。うまくいけば、夏休みには巣から出てきたカンムリオオツリスドリの幼鳥が見られるかもしれません。
・東京ズーネットBBの動画「
カンムリオオツリスドリの吊り巣」
(2005年6月14日撮影)
〔上野動物園東園飼育展示係 水本侑〕
(2010年07月02日)