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ゴリラの親子の近況
 └─上野  2010/06/04

 2010年4月1日にニシローランドゴリラの母親モモコとコモモを初めて運動場へ出し、メスのナナと同居させました。4月18日には、父親のハオコとメスのトト、ナナの3頭を母子といっしょにしてみました。5頭同居への準備は順調に進んでいます。

 4月24日から一般公開が始まり、この頃にはハオコを中心に群れも落ち着きを見せてきました。親子を含む放飼は天候を考慮しながら午後3時より1時間ほどおこなっていますが、今後はようすを見ながら時間を拡大する予定です。

 前回のニュースでは同居直後のようすをお知らせしました。
 その後に起きたちょっとした事件についてお話ししましょう。

 5月6日に母親のモモコから離れたコモモが電柵(脱出防止のため電流を通してある柵)に触れる事故がありました。
 そのときコモモが声を上げたようで、離れたところにいたモモコがあわてて駆け寄り、コモモを抱き上げました。コモモが電柵に近づいたときには、電源を切るように注意していましたが、我々の予想を超えた動きでした。
 大人のゴリラは電柵に一度触れると学習し、以後触れることはまずありませんが、幼いコモモは懲りずに、今後また経験することになるでしょう。

 5月12日には、父親のハオコがコモモを抱え、モモコのもとから連れ去る事件が起きました。この頃のハオコはコモモを自分の腕にしがみ付かせたり、抱き抱えたりと良き父親ぶりを発揮していました。
 モモコがコモモをいつものように離した一瞬の出来事でした。コモモを両手で抱きあげたハオコは二足歩行で一気に走り去り、それに気づいたモモコがあわてて追いかけると、ハオコはあっさりコモモを返しました。

 オーストラリアのタロンガ動物園育ちのハオコは、数頭のゴリラたちと一緒に生活していました。その間に群れの中では3回の出産・子育てがあり、そのようすを見ながら成長してきたハオコは大事な経験をしてきたことになります。
 その後も無警戒のモモコからコモモを連れ去るハオコの行動は続き、我々ゴリラ班にとって現在「謎の行動」になっています。

 しかし、この連れ去りの不可思議行動には、父親になったハオコのわが子に対するメッセージが見え隠れしているようにも感じられます。

写真上:母親のすきをねらって、ハオコがコモモを横取り
写真下:コモモを遊ばせているのか、どうか。

〔上野動物園東園飼育展示係 北田祐二〕

(2010年06月04日)



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