動物が姿かたちや動きをほかの物に似せることを「擬態」といいます。擬態することによって捕食者から身を守ったり、獲物に気づかれないように近づいて捕まえたりすることができます。
葛西臨海水族園の世界の海「モーリシャス」水槽にいるオニダルマオコゼもそんな変装の名人です。姿かたちは岩そのもの。近くでよく見ても、ひれも目も口もどこにあるのかわかりません。このままでもじゅうぶん擬態できているのに、さらに目と口だけを出して砂に潜ってしまうこともあるのです。これほど完璧な変装をしているオニダルマオコゼに他の魚がうかつに近づくと、大きな口でパクッと食べられてしまいそうですが、この水槽には食べられずにいる生き物もいます。
それは、枝サンゴの間に見え隠れする小さな魚やイソギンチャクの近くにいる小さなエビです。
たとえば、イトヒキテンジクダイは枝サンゴや岩をじょうずに使って生活しています。サンゴや岩から離れて群れで泳ぎまわることもありますが、危険を感じるとすばやく身を隠してしまうので、オニダルマオコゼもお手上げです。
また、イソギンチャクカクレエビもイソギンチャクの近くから離れることはほとんどありません。イソギンチャクと共生するクマノミのなかまは有名ですが、エビやカニにもこのような共生関係が見られます。
小さな生き物だからといってただ食べられてしまうのではなく、他の生き物に依存したり、共生することで捕食者から身を守っています。今後、他にもこんなたくましい生き物が登場するかもしれません、乞うご期待。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 牧茂〕
(2010年05月29日)
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