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カイツブリの子育て、その2
 └─井の頭 2010/05/29

 先週お知らせした井の頭自然文化園水生物館のカイツブリは、2010年5月19日に続いて5月22日に2羽目のひなが孵化し、5月25日現在、無事に育っています(前回のニュースはこちらをごらんください)。

 カイツブリのひなは、孵化してすぐに自力で親鳥の背中によじ登り、しばらく親鳥の背中の上で過ごします。ひなたちは親鳥の羽の中にすっぽり収まるとまったく見えなくなりますが、ときどき顔をのぞかせたり、巣の上や水面に浮いて親鳥から餌をもらったりするときに姿を見ることができます。

 ひなの餌として、コオロギやミールワームを1日に数回水槽の水面にまいています。親鳥はこれをすばやくくわえてひなの口元まで運び、ひなはそれをつまみとって食べます。このとき、親鳥はコオロギやミールワームの向きを変えながら、ひながうまくつまみ取るまで何度も繰り返します。

 今のところ、ひなは餌を食べ終わるとすぐに親鳥の背中によじ登り、再び隠れてしまいますが、このようすが見られる期間はそう長くはありません。孵化後10~15日で親鳥の背中よりも水の上にいる時間が多くなり、16~20日で親鳥の背中には入らなくなってしまいます。

 さて、巣にはまだ本物の卵1個と擬卵(ぎらん:本物に似せて作った人工卵)が5個残っています。この擬卵は昨年9月からずっと抱卵しているもので、親鳥は雌雄交代で温めています。しかし、本物は孵化予定日をだいぶ過ぎており、このまま孵化しなければ、いずれすべての卵を放棄するものと思われます。

 今回は2羽の繁殖にとどまりそうですが、しばらくするとまた産卵が始まるはずです。しかし、餌の確保や収容場所の問題、そして親の負担軽減も考えると、成り行きにまかせておくこともできません。昨年の実験結果をふまえ、擬卵を使って産卵をコントロールしつつ、子育てのようすもできるだけお見せする予定です。

写真上:親鳥の羽の下で守られているひな
写真下:水面でひとり泳ぎのひな

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 児玉雅章〕

(2010年05月29日)



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