葛西臨海水族園の「渚の生物」水槽の浅い場所には、岩に囲まれたタイドプール(潮だまり)があります。その中の数か所に、黄色いひも状の塊が見られますが、これは「ウミゾウメン」と呼ばれる、アメフラシの卵です。
アメフラシは、潮だまりで海藻を食べて暮らしている軟体動物のなかまで、雌雄同体の生物です。つまり、1匹がオスでもあり、メスでもあります。交尾の方法は、多くの場合、3匹以上のアメフラシが鎖状に連なって行われます。一番前の個体はメスとして、一番後ろの個体はオスとして交尾に加わり、その中間に位置する個体は、前の個体にはオスとして、後ろの個体にはメスとして行動するという変わったものです。ときには、環状となってすべての個体が雌雄両性として機能することもあるそうです。
水槽では3月下旬から4月上旬に交尾を観察しました。その後、水槽内の数か所に卵塊が見られるようになりました。アメフラシの卵は、卵殻と呼ばれる丸い袋の中に複数入っていて、この卵殻がたくさん連なってひも状になることからウミゾウメンと呼ばれます。ちなみに名前は「海ぞうめん」ですが、食べることはできません。
ウミゾウメンは最初は鮮やかな黄色をしていますが、発生が進むにつれて褐色を帯びるようになり、ふ化を迎えます。例年どおりですと、水槽内では5月中旬くらいまで観察することができます。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小木曽正造〕
(2010年04月23日)
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