2010年3月12日、上野動物園西園のワオキツネザルの島にいるメスの「フウ」が出産しました。昨年10月末に「テンテン」とのあいだで交尾が確認されており、妊娠期間は 134日でした。フウは2007年6月生まれ。今回が初産です。
出産当日の朝、担当者が寝室に入ると、子はすでに母親の胸にしっかりしがみついており、母親はいつもと変わりないようすでした。親子だけを群れから離すことも考えましたが、群れでの生活を優先したほうがよいと考え、初日から島に放しました。
フウは、寝室と島をつなぐつり橋を全速力で走って渡ったり、いつもどおり枝から枝へジャンプしたり、見ているこちらとしてはひやひやするほど元気です。テンテンは父親としての自覚が芽生えたのか、いつもフウを守るように寄り添い、ときには子どもに触っています。
フウは、以前に比べて群れの中での力関係が数段強くなりました。とくにオスの「ジジ」の毛をむしったり噛んだり、接近を許さなくなりました。ジジは昨年(2009年)、まだ1歳半にしかならないのに、フウに対してさかんにマウント(交尾のためにメスに乗る行動)をしていた個体です。
ワオキツネザルたちを寝室に収容すると、狭い中でフウが激しくジジを追いかけ、子が落下したこともありました。そのため、現在は夜間のみ室内を格子戸で仕切り、「テンテン・フウ組」と「他のオス3頭」をわけて飼育しています。
4月1日、それまで母親の胸にばかりいた子が、母親の背中にしがみつくようになり、顔がよく見えるようになりました。
周囲を池で囲まれたワオキツネザルの島。つり橋を渡って寝室へ帰るという環境で、今後子どもがどのように育っていくでしょうか。ワオ島で第一号として生まれたこの子が無事育ってくれることを祈らずにはいられません。
〔上野動物園西園飼育展示係 細田孝久〕
(2010年04月09日)
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