東京にもようやく初雪が降りました。まだまだとても寒い日が続いていますが、水生物館では、早くも早春の便りが届いています。
水生物館で展示しているアズマヒキガエルは、井の頭恩賜公園や園内の池で採ってきたオタマジャクシから育てています。今年で生まれてからようやく3年が経ちました。
ある朝、水槽の中から「クゥクゥ、クゥクゥ」と小さな鳴き声が聞こえてきました。メスをめぐってガマ合戦をしていたのです。
アズマヒキガエルは、繁殖期になるとメスの上にオスが乗りかかり、前脚でしっかりとメスを抱えてペアになります。これを抱接といいます(写真上)。このペアに後から来たオスがさらに乗りかかって、メスを奪おうとします。しかしペアになったオスは、あとから来たオスに「カエルキック」をあびせ、なんとか振り払おうと抵抗します。ヒキガエルの産卵は、特定の池などでいっせいにおこなわれるため、さながら合戦のように見えるのです。
水槽には30尾ほどのカエルを展示していますが、今のところ5ペアが成立し、あぶれたオスがペアを妨害しているようすが観察できました。
また、その後産卵も確認しています。うどんのように長く、つながった卵(卵塊:写真下)は、ヒキガエルのなかまの特徴で、長いときには5メートルにもなります。数は2千粒から多いときには2万粒にもなるそうです。展示しているヒキガエルは今回が初めての産卵で、とても若い個体なので、卵の数はそれほど多くはなさそうです。
ヒキガエルの産卵は、野外では1週間程度で終わってしまいます。水槽の中でも同じように短いことが予想されますのでお早めにごらんください! 都内のアズマヒキガエルの産卵は、通常、2月の中旬から3月の初旬におこなわれます。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 中村浩司〕
(2010年01月15日)
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